
長寿化と巨額資産移転が資産管理を変える 調査が示す富裕層の新たな課題
長寿時代の到来で資産計画は「運用」から「人生設計」へ
バンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンクが公表した2026年版の富裕層調査によると、長寿化の進展や世代間での資産移転の加速、投資対象の多様化を背景に、富裕層の資産管理はこれまで以上に複雑な局面を迎えている。調査では、投資可能資産300万ドル以上を保有する米国の富裕層1,431人を対象に、資産形成や承継、投資行動の変化について分析している。
調査では、回答者の92%が長寿を資産設計上の重要なテーマと考えており、94%が健康寿命を延ばすための取り組みを実践していると答えた。さらに61%は、長寿を前提とした資産設計について金融アドバイザーと相談している。
一方で、実際の備えは十分とは言えない。遺言書、事前医療指示書(リビングウィル)、永続的委任状という基本的な3種類の法的書類をすべて整備している人は46%にとどまった。
資産承継手段として信託を活用している人は55%だったが、信託制度を十分理解していると回答した人は33%に過ぎない。また、現在利用していない人の半数以上は、将来的な活用に関心を示している。
若い世代では、ライフイベントの初期段階から資産保全を意識する傾向もみられる。Z世代・ミレニアル世代では32%が婚前契約を締結しており、さらに15%が締結を予定している。これに対し、X世代は15%、ベビーブーマー世代・サイレント世代では4%にとどまった。
バンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンクのケイティ・ノックス社長は、「現在進行している大規模な資産移転は、単なる資産の受け渡しではなく、人々の資産との向き合い方そのものを変えている」と指摘する。投資、融資、銀行サービス、相続設計を個別ではなく統合的に設計するニーズが高まっているという。


事業承継と世代交代が加速 家族経営企業の課題も鮮明に
調査では、事業承継のスピードが大きく加速していることも明らかになった。
富裕層の事業オーナーの23%が、自身の会社を相続によって取得したと回答している。この割合は2024年の11%、2022年の5%から大きく増加している。
家族が経営判断に関与している割合も急増した。2024年には7%だったが、2026年には27%まで拡大している。一方、「家族は経営に関与していない」と答えた割合は49%から24%へ低下した。
事業オーナーの78%は後継者計画を重要視しているものの、正式な承継計画を文書化している企業は20%しかない。さらに、事業承継における最大の課題として25%が「家族間での話し合い」を挙げており、制度面だけでなくコミュニケーション面の課題も浮き彫りになっている。
超富裕層はプライベート市場へ 若年層は暗号資産やAIを積極活用
純資産2,500万ドル以上の超富裕層(UHNW)は、公開市場よりもプライベート市場に成長機会を見出している。
回答者の77%が、非公開市場の方が高い投資機会を提供すると考えており、有望分野として最も多く挙げられたのは不動産で、次いでプライベート・エクイティが続いた。
また、超富裕層ではクレジット(借入)を積極的な資産戦略として活用する傾向も強い。半数以上が戦略的に借入を利用しているのに対し、資産300万~1,000万ドル層では16%にとどまる。
借入の目的も幅広く、投資機会の獲得(37%)、事業運営支援(36%)、流動性確保(34%)、資産承継(22%)など、資産全体を効率的に運用する手段として位置付けられている。
一方で、資産を子ども世代へ引き継ぐことには慎重な姿勢も見られる。61%が子どもの勤労意欲への影響を懸念しており、事業への参画を促す(51%)、信託に条件を設ける(41%)、資産総額を開示しない(36%)などの対策を講じている。
若い富裕層では投資スタイルも大きく変化している。
Z世代・ミレニアル世代の67%は、株式や債券だけでは十分なリターンを得られないと考えており、株式比率を抑える一方、オルタナティブ投資(15%)や暗号資産(13%)への配分を高めている。
暗号資産については29%が最も有望な資産形成手段と回答し、58%がすでに保有している。これは2024年の49%から増加している。また92%が保有済み、あるいは投資対象として関心を持っていると答えた。
今後オルタナティブ投資への配分を増やす意向を示した若年層は88%に達し、ベビーブーマー世代・サイレント世代の15%を大きく上回った。
AI活用も進んでいる。若年層の47%は企業分析や市場調査にAIを利用しており、87%は資産運用においてアドバイザーがAIを活用することに抵抗はないと回答した。ただし、最終的な投資判断については65%が人間のアドバイザーを希望しており、AIと専門家を組み合わせたハイブリッド型の支援が求められている。
また、若年富裕層ではコレクション投資への関心も高い。42%が美術品を所有しており、未保有者の75%が取得を希望しているほか、94%が何らかの収集品を保有している。
複雑化する資産管理には統合的な支援が不可欠
調査は、長寿化、事業承継、オルタナティブ投資、AI活用などが同時進行する現在、富裕層の資産管理が単なる投資運用ではなく、人生設計全体を支える総合的なマネジメントへと変化していることを示している。
バンク・オブ・アメリカ・プライベート・バンクでは、投資運用だけでなく、銀行サービス、融資、信託、相続、事業承継、慈善活動までを一体的に設計する資産管理サービスを提供している。アドバイザーが各専門分野を横断して連携し、長寿社会における資産形成や流動性管理、世代間の資産移転まで総合的に支援する体制を整えている。
また、AIを活用した情報分析や業務効率化も進めており、2025年時点ではプライベート・バンク顧客の93%がデジタルサービスを利用している。テクノロジーによって利便性を高めながらも、最終的な資産設計では人間の専門家による助言を重視する姿勢が、今後の資産管理の方向性を示している。(出典:PR Newswire、画像:バンク・オブ・アメリカ)
















