マリオット・ボンヴォイ、クリエイター主導で世界規模のキャンペーンを4週間で制作

マリオット・インターナショナルのロイヤリティプログラム「マリオット・ボンヴォイ」は、クリエイターとの協業を通じて、世界規模のマーケティングキャンペーンを短期間で実現した。従来の広告制作プロセスにとらわれず、企画から完成したコンテンツの納品までをわずか4週間で完了。10カ国、23の目的地、14のホテルブランドを対象に、多様なチャネルで展開するコンテンツを制作した。

同社が新たに打ち出したグローバルブランドプラットフォームは、「人生の旅路がどこへ導こうとも、私たちはそこにいます(Wherever life’s journey takes you, we’ll see you there)」というメッセージを掲げるものだ。ボンヴォイを単なるポイント獲得や宿泊特典のためのプログラムではなく、人生のさまざまな場面で旅行者に寄り添うパートナーとして位置づけることを目指している。

マリオット・インターナショナルでグローバルマーケティングを担当するシニアバイスプレジデント、ベナズ・ガフラマニ氏は、世界各地に幅広いホテルブランドと施設を展開する同社にとって、撮影や制作を一元的に進めることは物流面、運営面の双方で大きな課題だったと説明する。各市場の実情に合わせて柔軟に動く一方、グローバル規模での展開に必要なスピードと機動力も確保する必要があったという。

キャンペーンは2026年9月に始まり、世界各地で1,600件以上の屋外広告(OOH)を展開した。機内エンターテインメントと屋外広告は年末まで継続し、ソーシャルメディア向けコンテンツは2027年まで発信する計画だ。
同社が重視したのは、旅行への関心が高まっているタイミングで消費者との接点をつくることである。マリオットが共有したニールセンのデータによると、旅行者の71%は空港にいる間に次の旅行について考えている。また、空港広告に接触した航空利用者の約77%が、旅行中または旅行後に何らかの行動を起こしているという。

今回の取り組みは、従来とは異なる制作手法を試す試みでもあった。すべてが常に完璧に進んだわけではないとしながらも、キャンペーンとコンテンツ制作の進め方を見直すうえで、従来にないアプローチになった。

クリエイターの視点を生かし、世界各地の体験を描く

マリオット・ボンヴォイは、クリエイターと個別に直接契約するのではなく、旅行コンテンツを手がけるエージェンシー、ビューティフル・デスティネーションズと協業した。同社は、各プラットフォームを合わせて5,000万人以上のフォロワーにリーチし、650人以上のクリエイターからなるネットワークを持つ。

同社の創業者兼CEO、ジェレミー・ジャウンシー氏は、マリオット・ボンヴォイが自社の「クリエイター・オペレーティング・システム」をグローバル規模の制作パートナーとして組み込んだことについて、大手旅行ブランドでは初めての事例だと説明している。

マリオットがクリエイティブの方向性として示したのは、親密さや共感しやすさを重視し、過度に演出しない表現である。ホテルでの滞在を理想化された広告として見せるのではなく、ゲストが実際に体験する日常の一場面として伝えることを目指した。その考え方を象徴する例として、シーツが少しくしゃくしゃになっていたり、食事が完璧に盛り付けられた状態ではなく、すでに食べ始められていたりする場面を挙げられる。整然とした広告表現よりも、旅行者が実際に目にする光景に近いコンテンツをつくろうとしたのである。

こうした制作手法の背景には、クリエイターマーケティングの役割の変化がある。クリエイターへの投資や関与が拡大し、インフルエンサーを活用した施策は、マーケティングにおける中核的なメディアチャネルの1つとなりつつある。企業は、ターゲットとなる人々にとって身近で、信頼感のあるコンテンツを生み出すため、クリエイターとの協業や共同制作を強化している。

ガフラマニ氏は、クリエイターが自分たちのオーディエンスの感情や関心をよく理解し、より人間味のある表現を生み出せる点を評価する。旅行は個人の思い出や価値観と深く結びつく体験であり、クリエイターならではのパーソナルな視点が生きる領域だ。

同社は、1つの広告素材を複数の媒体向けに切り分けて使い回す従来型の手法には依存しなかった。各チャネルに求められる要件を踏まえつつ、ブランドが伝えたい雰囲気をどのように表現するかをクリエイターと検討し、対象となる各目的地で彼らがコンテンツ制作の役割を担う体制を採用した。

ポイント獲得を超えた、旅行者との長期的な関係づくり

マリオット・ボンヴォイは、会員数が3億人に達したことを明らかにしている。マリオットの幹部は2026年第2四半期の決算発表でも、プログラムを通じて需要や顧客エンゲージメント、価値の創出を引き続き推進していく方針を示した。同社はボンヴォイを、ポイントや無料宿泊などの特典を提供するだけの仕組みではなく、顧客との継続的な関係を育むものと捉えている。会員の興味や情熱を理解することで、人生の節目やさまざまな場面に寄り添い、旅行をより価値ある体験へとつなげることができるという考えだ。

ボンヴォイは、148の国と地域で約40のブランド、1万軒以上の施設を展開するマリオットにとって、ビジネス旅行やレジャー、家族旅行をはじめ、人生の重要な局面で旅行する消費者と接点を築く重要な手段となっている。

マリオットは2027年に創業100周年を迎える。今回のブランドプラットフォームは、長年培ってきた消費者とのつながりを次の段階へと発展させる取り組みの一環であり、クリエイター主導のキャンペーンも、その未来を形づくる可能性を持つ。

キャンペーンの成果については、今後、データ分析やブランドリフト調査を通じて評価する予定だ。ガフラマニ氏は、特にアトリビューションモデルやマーケティング・ミックス・モデリングに重点を置き、キャンペーンが各ホテル施設のビジネスにどのような効果をもたらしたかを検証するとしている。

今回の事例は、クリエイターを単なる広告出演者として起用するのではなく、企画から制作までを担うパートナーとして位置づけることで、グローバルな規模と制作スピードを両立させようとする試みである。各地の旅行体験をその土地に根ざした視点で伝えながら、ブランド全体として一貫したメッセージを届ける手法が、今後どのような成果につながるかが注目される。(出典:MARKETING DIVE、画像:Marriott)

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