
アップルCEO就任のジョン・ターナス氏、直後に迫る最初の試練 新型iPhone発表が試金石に
アップルの新CEOに就任したジョン・ターナス氏にとって、早くも重要な局面が迫っている。ティム・クック氏から経営のバトンを引き継いだ直後となるなか、次期iPhoneの大型発表が9月9日に予定されており、就任からわずか8日で最初の大きな試金石を迎えることになる。
9月1日には、ローゼンブラットのアナリスト、バートン・クロケット氏がアップルの目標株価を従来の300ドルから303ドルへ引き上げた。一方で、投資判断は「中立(Neutral)」を維持している。新たな目標株価は、当時の株価水準から約4%の下落余地を示すものでもある。

ローゼンブラットの分析では、ターナス氏率いるアップルが今後、サプライチェーン上の制約を適切に乗り越えられることが重要な前提となっている。製品価格の引き上げや、より高価格帯のモデルを強化する戦略は、コスト上昇などによる利益率への圧力を吸収する可能性がある。
ただし、ターナス氏に求められるのは、アップルが現金を生み出せることを証明することではない。アップルにはすでに巨大な事業基盤があり、クック氏の15年間の在任中に企業価値は約3,500億ドルから約4.5兆ドルへと拡大した。新CEOにとって本当の課題は、この巨大な企業規模を維持しながら、次の成長を生み出せるだけの新しい製品やイノベーションを継続的に提示できるかどうかにある。
アップルは直近の6月四半期でも過去最高の業績を記録している。売上高は前年同期比16%増の1,094億ドル、希薄化後1株当たり利益(EPS)は29%増の2.02ドルとなった。iPhoneとMacの売上高はいずれも6月四半期として過去最高となり、世界で稼働しているアップル製デバイスの台数も25億台を超えている。
この強固な業績はターナス氏にとって大きな追い風である。さらに同氏はアップルで長年ハードウェア開発に携わってきたため、製品設計やエンジニアリングについて深い知識を持つ。9月9日のイベントで披露される製品についても、その技術的な背景を理解していることは強みとなる。
高い株価評価とAI戦略が新CEOの課題に
一方で、アップル株には高い期待がすでに織り込まれている。株価収益率(PER)は30倍台で推移しており、単に新製品の発売を成功させるだけでは、現在の企業価値を正当化するのに十分ではない可能性がある。ローゼンブラットの目標株価が当時の市場価格を下回っていることも、市場がアップルの経営移行を比較的スムーズに進むと見ているだけでなく、次の製品サイクルについても相応の成功をすでに織り込んでいることを示唆している。
アップル株を保有するザックス・インベストメント・マネジメントのチーフ・マーケット・ストラテジスト、ブライアン・マルベリー氏は、ターナス氏にとって大きな課題の一つは、AIを単なるiPhone上のアプリやSiriの高度化にとどめず、より大きな価値を生み出す存在へと発展させられるかどうかだと指摘する。
AIは、ターナス氏がクック氏から引き継ぐ重要な戦略課題でもある。アップルはハードウェア分野では圧倒的なブランド力を持つ一方、AI競争ではGoogleやMicrosoft、Metaなどに比べて後れを取っているとの見方がある。競合各社がAIを搭載したスマートフォンやデバイスを通じて、消費者にとっての「標準的なデバイス」の位置を狙うなか、アップルがiPhone登場後に匹敵する新たなイノベーションを生み出せていないという批判も存在する。つまり、ターナス氏にとって9月9日の発表は、単なる新製品発表ではない。アップルが次の成長ステージへ移行できることを市場に示す最初の機会となる。
投資家はアップルをどう見ているのか
投資家の動向を見ると、アップルに対する機関投資家の信頼は依然として強い。2026年第2四半期末時点では169のヘッジファンドがアップル株を保有しており、前四半期の170からはわずかな減少にとどまっている。バークシャー・ハサウェイは同四半期に2億2,790万株の保有を維持した。一方、フィッシャー・アセット・マネジメントは保有株数を3%増加させ、アローストリート・キャピタルは54%という大幅な買い増しを行った。
空売り比率についても、浮動株に対して約0.8~0.9%と推定されており、アップル株に対する強い弱気姿勢が広がっているわけではない。市場には、アップルの長期的な競争力を評価する投資家が依然として多いとみられる。それでも、ターナス氏の経営手腕が問われることに変わりはない。ローゼンブラットの分析が示す最大のポイントは、9月9日の新製品発表がどれだけ革新性を備えているか、そしてその内容が現在の高い株価評価を支える材料となるかという点である。
アップルには、巨大なユーザー基盤、強力なブランド、豊富なキャッシュフロー、そして世界規模の販売網という圧倒的な資産がある。ターナス氏はそれを引き継ぐ一方で、AIという新たな競争軸への対応や、iPhoneに次ぐ成長エンジンの創出という課題にも直面する。したがって、9月9日のイベントは新CEOにとって単なる就任直後の恒例行事ではない。アップルが過去の成功を維持する企業なのか、それとも次の革新を生み出して再び大きな成長局面に入る企業なのか。その方向性を市場に示す、最初の重要なプレゼンテーションとなる可能性が高い。
なお、アップル株を投資対象として評価する一方で、AI関連企業のなかには、より大きな成長余地や異なるリスク・リターン特性を持つ銘柄も存在する。AI投資を検討する際には、個別企業の技術力だけでなく、バリュエーション、関税政策、国内生産への回帰、AIインフラ需要など、複数の要因を総合的に見る必要がある。(出典・画像:Apple, insidermonkey.com他)
















