AppleのAI戦略、iPhone Duo発表の主役に デバイス横断で広がるAI活用

Appleは2026年9月9日、本社で開催した基調講演で、同社にとって大きな転換点となる折りたたみ型iPhone「iPhone Duo」を発表した。これまででも特に注目度の高い新製品の一つである。一方、今回のイベントで存在感を放ったのはハードウェアだけではない。AppleがAIを製品やサービスにどう組み込もうとしているのかも、随所で示された。

生成AIへの対応が競合他社に比べて遅れているとの批判を受けてきたAppleだが、今回の発表では、iPhoneだけでなくApple WatchやAirPodsまで含め、AIを活用した機能を相次いで打ち出した。SamsungなどがすでにAIをスマートフォンやアプリに積極的に組み込んでいるなか、Appleも自社製品のエコシステムを生かしたAI戦略を前面に出した格好である。

AppleのCEOを務めるジョン・ターナス氏は基調講演の冒頭からAIに焦点を当て、iPhoneを単なるスマートフォンではなく、日常的に使うさまざまな製品をAIでつなぐ「スマートなパーソナルハブ」と位置付けた。iPhoneを中心として、利用者の日々の行動や情報に合わせて機能が連携するエコシステムを構築する考えである。

その象徴となるのが、生成AIによって強化されたSiriだ。新しいSiriはiOS 27で9月14日にベータ版として提供され、従来よりも個人の状況を理解した応答が可能になる。必要に応じて複数のアプリから情報を取得し、ユーザーの質問に対して横断的に答えることを想定している。
たとえば、「マイケルが教えてくれたゲームは何だった?」と尋ねれば、Siriがテキストメッセージやメールなどを検索し、そこから関連する情報を見つけ出す。さらにiPhoneのカメラを利用して、ユーザーが目の前にしているものについて情報を提供する機能も用意される。Appleが目指すのは、端末の中に閉じたアシスタントではなく、個人の情報と現実世界の双方を理解し、「世界全体の知識」にアクセスできるAIアシスタントである。

Apple WatchとAirPodsにも広がるApple Intelligence

AI戦略はiPhoneだけにとどまらない。Apple Watchでは、Apple Intelligenceを取り入れて再設計されたHealthアプリが導入される。ユーザーは心拍数、睡眠パターン、運動など、日常的に蓄積されるさまざまなデータをもとに、自身の健康状態についてよりパーソナライズされた情報を得られるようになる。

新たに設けられる「健康時代(Health Age)」では、ユーザーの健康状態が実年齢に対してどのような状態にあるのかを時系列で確認できる。「Insights」タブでは、心臓、睡眠、バイタル、日々の準備状態などについて、1日の中で得られた情報を確認できる仕組みだ。ウェアラブルデバイスから収集したデータをAIで解釈し、単なる数値の記録から個人向けの健康情報へと変えていく狙いがうかがえる。

新しいAirPods 5にもAIを活用した機能が搭載される。ライブ翻訳に対応するほか、Siri AIとのハンズフリーでの会話も可能になる。ユーザーが画面を操作することなく、音声を介してAIとやり取りする利用シーンを広げるものだ。
さらに今回の基調講演では、AppleがAI開発のためのコンピューティング環境としてMacをどう位置付けているのかも紹介された。最新のMac miniとMac Studioについて、AIモデルの開発や実行に適した製品であることをデモンストレーションで示したのである。

具体的には、4台のMac Studioを組み合わせ、1兆パラメータ規模のAIモデルと連携させる例を紹介した。また、別のデモではMac mini上で2つの異なる10億パラメータ規模のモデルを動作させた。Mac miniやMac Studioは、ディスプレイを必要とせずにモデルをリモートで実行できることなどから、AI開発者の間でも支持を集めている製品である。

AIはAppleの成長を再加速させるのか

今回の発表によって、AppleがAI企業としての存在感を高めようとしていることは明確になった。しかし、AI機能を追加したことだけで、Appleの販売が大きく伸びるとは限らない。
Appleはこれまで、生成AIや高度なSiriへの対応が遅れていることを指摘されてきた。それがiPhoneの販売に悪影響を与えたのかという点について、Counterpoint Researchの主任アナリスト、ゲリット・シュニーマン氏はYahoo Financeに対し、「そうではない」との見方を示している。

同氏によれば、Appleは依然として市場全体を上回るパフォーマンスを見せている。特に中国など、Appleが高度なAI機能やAI版Siriをまだ本格的に提供していない市場でも、同社の製品は好調だという。欧州についても同様の状況が見られる。
つまり、今回のAI強化は、これまでAppleの成長を支えてきたiPhoneそのものをAIによって一気に刷新するというより、iPhoneを中心とした製品群全体の価値を高めるための中長期的な取り組みと見ることができる。iPhone Duoという新しいハードウェアの登場と同時に、Siri、Apple Watch、AirPods、MacまでAIで結び付ける姿勢を示したことに、今回の発表の重要な意味がある。

AI企業がハードウェアへ進出する動きが強まる一方、Appleはすでに巨大なハードウェア・エコシステムを持つ。その強みをAIによって再構築できるかどうかが、今後のAppleの競争力を左右することになりそうだ。(出典:yahooo!frannce、画像:Apple)

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