UCCが日本のコーヒー文化を再提示 90年の伝統を現代的なブランドへ

2021年、ロンドンを拠点とするクリエイティブエージェンシーのザ・クリアリングは、日本を代表するコーヒーメーカーである上島珈琲店とパートナーシップを結び、英国市場への進出に向けたブランドづくりを支援した。その後、上島は英国で着実に存在感を高め、国内で展開される国産挽き豆コーヒーブランドとして5番目に人気のブランドへと成長した。

今回、上島はラヴァッザやスターバックスといった世界的なコーヒーブランドに対抗する存在感をさらに高めるため、再びザ・クリアリングとタッグを組み、自社ブランドのリニューアルに取り組んだ。

ザ・クリアリングのクリエイティブディレクター兼創設者、アンディ・ハウエル氏によれば、上島にはもともと「信頼性、伝統、規模」というブランドとしての強みが備わっていた。しかし、それらの価値が英国の消費者には十分に伝わっていなかったという。
今回のリブランドでは、単に日本発のコーヒーブランドであることを強調するのではなく、日本のコーヒー文化がなぜ独自の発展を遂げてきたのか、その背景にある思想や姿勢まで伝えることを目指した。そこにあるのは、90年にわたって積み重ねてきた伝統と、既存の常識にとらわれず新しい表現を追求する姿勢との融合である。

「緻密さ」と「大胆さ」を併せ持つ新しいブランド表現

今回の刷新で中心的な役割を担うのが、上島ブランドの二面性を表現した新たなブランドボイスである。
一方には、コーヒーづくりに対する高度な技術と細部まで考え抜かれた姿勢がある。日本のコーヒー文化に根付く丁寧な所作や抽出へのこだわり、コーヒーがもたらす気分の回復やリフレッシュなど、精度と持続性を重視する側面である。
もう一方には、既存のルールに挑戦し、他とは異なる存在であることを恐れない「大胆で創造的」な精神がある。今回のリブランドでは、この一見対照的な2つの価値を組み合わせることで、従来の日本的な職人性だけでは語りきれない上島の姿を提示している。

ビジュアル面でも、このコントラストが重要な要素となっている。
それぞれのコーヒーブレンドの味わいを伝えるため、日本の書家カーシュウによる特注のタイポグラフィを採用した。力強さと繊細さを併せ持つ文字表現によって、日本のコーヒーづくりに見られる忍耐強さや正確さ、職人的な技術を想起させるデザインとなっている。

一方、英国人アーティストのコン・マクヒューによる鮮やかで遊び心のあるイラストレーションは、現代の日本文化が持つ未来志向や既存の価値観を打ち破るエネルギーを表現するものだ。伝統を象徴する要素と、現代的で自由な表現を組み合わせることで、日本のコーヒー文化を単なる「職人技」としてではなく、現在進行形の文化として見せている。

日本のコーヒー文化を世界へ伝えるブランドへ

ブランドの新しい世界観は、ビジュアルだけにとどまらない。カラー、写真、タイポグラフィ、イラストレーションなど複数の要素を組み合わせることで、上島が歩んできた歴史と、これから目指す方向性を一体的に表現している。

カラーパレットでは、黒と白を基調としたミニマルな構成に、鮮やかな赤を組み合わせた。赤は日本の国旗を想起させる色でもあり、日本発のブランドであることをさりげなく示しながら、ブランド全体に強い視認性と現代的な印象を与えている。
さらに、上島の世界観やコーヒーづくりへの向き合い方を伝える写真も重要な役割を担う。豊かで魅力的なビジュアルを通じて、上島が長年にわたって培ってきたコーヒーへの知識や技術、そして約1世紀に及ぶ「コーヒーを極める」取り組みを可視化している。

今回のリニューアルは、日本が世界のコーヒー市場において独自の存在感を強めていることを示すものでもある。コーヒー産業では、イタリアやブラジル、ケニアなどの国々にルーツを持つ企業やブランドが長く大きな影響力を持ってきた。そのなかで、日本企業である上島が自らの文化的背景と技術を前面に出し、新たなブランド表現によって海外市場での存在感を高めようとしている。

そこにあるのは、単に「日本のコーヒー」を海外に紹介するという発想ではない。長年培ってきた精密さや品質へのこだわりを守りながら、それを現代的で大胆なデザインへと翻訳することで、日本のコーヒー文化そのものを新しい文脈で提示する試みである。
伝統と革新、精密さと遊び心。その両方をブランドの中に取り込むことで、上島は日本のコーヒー文化が持つ独自性を世界の消費者に向けて改めて提示しようとしている。(出典:CREATIVE REVIEW、画像:上島珈琲)

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