
UK:ロイヤル・バレエ&オペラ、新たなブランドアイデンティティで再出発
ロンドンのロイヤル・オペラ・ハウスは、長年にわたり英国の舞台芸術を牽引してきたバレエとオペラの拠点であり、2023年春にはその名称を「ロイヤル・バレエ&オペラ」へと改称した。これは、ロンドンを拠点とする複数の芸術団体の一体感を反映し、バレエ部門の存在がより適切に認識されることを目指した変更である。
この新たなブランド名を補完する形で、同団体はDesignStudioと共同で新しいビジュアル・アイデンティティを開発。社内のクリエイティブ・チームと連携し、歴史的な価値を保持しつつ、現代性と柔軟性を兼ね備えたデザイン体系を構築した。
柔軟で持続可能なデザインの構築
今回のリブランディングでは、今後数年にわたり、社内外のあらゆるチームが一貫して使用できるビジュアルツールキットの導入が重要視された。デザイン要素には、繊細なテーパーと大胆なカーブを持つセリフ体と、力強いグロテスク体のフォントが採用され、個性的でありながら実用性も高い文字設計がなされている。
ワードマークのタイポグラフィには、「R」の脚部が長く伸びていたり、しゃがみ込むようなアンパサンド記号が使われるなど、意図的な個性が込められている。
伝統と革新の融合:色彩とビジュアル表現
ロイヤル・バレエ&オペラを象徴する伝統的な赤は、新たなブランドデザインでも中心的な要素として継承されたが、抽象的な白のテクスチャーや現代的なアートスタイルと組み合わせることで、モダンな印象を強調している。
ビジュアル言語の構築においては、演目のストーリーを視覚的に補完する構造が採用され、観客に芸術体験をより深く届ける意図が込められている。画像が使用できない場面では、抽象的なテクスチャや視覚的メタファーを用いることで、表現の幅を持たせた。
刷新された言語的アイデンティティと観客との接点
DesignStudioの説明によると、視覚面に加えて、言語的なアイデンティティの再設計も重視された。これは、ロイヤル・バレエ&オペラがより包括的かつ柔軟なメッセージを発信できるようにするためであり、舞台芸術の物語性を引き出しつつ、幅広い観客層に訴求する工夫が凝らされている。
ブランドの歴史を尊重したモダンな再構築
今回のリブランディングは、ブランドイメージを根本から覆すようなものではない。むしろ、ロイヤル・バレエ&オペラが誇る何世紀にもわたる伝統を尊重しながら、ビジュアルや言語のアプローチを洗練させ、より明快で、生命力に満ちたアイデンティティを築いたものである。
この取り組みは、舞台芸術団体が変化する時代に対応し、若年層を含む新たな観客層との接点を築くための流れの一環として位置づけられる。歴史ある団体であっても、ブランドの進化を通じて現代的な感性に応える姿勢が求められている今、その象徴的な試みといえる。(出典:Creative Review他)