Gap、音楽と映画の新世代スターで秋のデニムを訴求

Gapは、音楽とエンターテインメントの分野で注目を集める若手タレントを起用し、2026年秋のデニムキャンペーン「Denim on Your Own」を展開する。今回の施策では、映画『Obsession』でブレイクしたインデ・ナバレットと、シンガーソングライターのマルコム・トッドを起用。デニムを単なるファッションアイテムとしてではなく、音楽やダンスを通じた自己表現の手段として描いている。

キャンペーンの中心となる映像では、ナバレットとトッドがデニムスタイルで登場し、白を基調とした抽象的な空間を舞台にパフォーマンスを繰り広げる。トッドは、ロビンが2010年に発表した代表曲「Dancing on My Own」を自身の解釈で歌い、ミュージックビデオを思わせる演出によって、過去のポップカルチャーと現在の若い世代をつなぐ構成となっている。
「Dancing on My Own」のカバーは今回のキャンペーンのために新たに録音されたもので、映像全体の核となる音楽として使用されている。Gapは、過去の象徴的な音楽やカルチャーをそのまま再現するのではなく、新世代のアーティストを通じて再解釈することで、ブランドが持つ歴史と現在の文化を接続しようとしている。

今回のキャンペーンは、Gapが長年取り組んできた「音楽とファッション」の組み合わせを、現在の若いクリエイターを軸に再構築したものでもある。特に、自己表現や個性を重視する若年層に対し、デニムを自分らしさを表現するためのアイテムとして位置づけている点が特徴である。
ナバレットは2026年のホラー映画『Obsession』で注目を集めた新進俳優であり、Z世代を中心に存在感を高めている。一方のトッドはシンガーソングライターとして活動し、最新アルバム『Do That Again』を発表。北米ツアーも予定されており、音楽シーンでの人気を拡大している。

TikTokから街頭広告まで、多面的に展開

キャンペーンは8月からGapのデジタル、ソーシャルメディア、メール、店舗などで順次展開される。さらに、ニューヨークのタイムズスクエアやロサンゼルスのサンセット・ブールバードなど、屋外広告にも展開範囲を広げる。

デジタル広告ではYouTube、TikTok、Meta、Pinterestなどを活用するほか、クリエイターとのコラボレーションも実施する。オンライン上の動画コンテンツだけでなく、店舗や街中でキャンペーンに触れられるようにすることで、若い消費者との接点を広げる狙いである。
映像の監督を務めたのはタヌ・ムイニョ、クリエイティブディレクションはGapのクリエイティブ責任者カルヴィン・レオンが担当した。ファッションとビジュアル面ではアラスター・マッキムが携わり、撮影はフォトグラファーのビョルン・ルースが担当している。
キャンペーンで紹介される商品には、ナバレットが着用する「ミッドライズ・ストレート・テーパー・ジーン」や、トッドが着用する1990年代を想起させるルーズジーンズなどが含まれる。

2026年秋のデニムコレクションは、フィット感と着回しやすさを重視して設計されている。ユーティリティから着想を得たカラーや、現代的にアップデートされたシルエットを取り入れ、日常のさまざまなスタイルに合わせやすいラインナップを目指している。
今回の取り組みは、Gapが近年強化しているノスタルジーを軸としたマーケティングの延長線上にもある。前月にはヘイリー・ビーバーと組み、1990年代を想起させるデニムと「The Hailey Jean」を中心としたカプセルコレクションを展開した。

またGapはこれまでも、音楽とダンスを組み合わせた広告でブランドの存在感を高めてきた。過去にはケリスの楽曲「Milkshake」を使用したダンス中心の広告で話題を集めたほか、ガールズグループのKATSEYEとの取り組みも実施している。
KATSEYEとのコラボレーションでは、約80億件のメディアインプレッションと、複数のプラットフォームを合わせて5億回を超える再生を記録したとされる。その後、Gapのデニムカテゴリーは2桁成長を達成しており、音楽やソーシャルメディアを組み合わせたマーケティングが販売面にも波及している。

「90年代」から現在へ、Gapが文化との接点を再構築

Gapがこうしたカルチャー主導のマーケティングを重視する背景には、若年層との関係を改めて構築する狙いがある。同ブランドはかつて、米国のモール文化や若者のファッションを象徴する存在だったが、消費者の購買行動やファッションのトレンドが変化するなかで、ブランドの存在感をどう維持するかが課題となっていた。

そこでGapは、TikTokをはじめとするソーシャルメディア上の文化と、1990年代から2000年代初頭にかけてのブランドイメージを組み合わせる戦略を強めている。単純に過去の広告やデザインを復刻するのではなく、現在のアーティストやクリエイターを起用し、過去の文化を新しい文脈で再構成することが特徴である。
今回の「Denim on Your Own」も、その考え方を象徴する施策である。ロビンの楽曲をマルコム・トッドが歌い、インデ・ナバレットとともにパフォーマンスすることで、2010年代のポップカルチャーを現在の若い世代へと橋渡ししている。
つまりGapが売ろうとしているのは、単なるデニムではない。音楽、ダンス、映画、ソーシャルメディア、そして過去のカルチャーを組み合わせながら、「自分自身をどう表現するか」という体験そのものをブランド価値として提示しているのである。

こうした戦略は、業績にも一定の成果を見せている。Gapは第1四半期の同規模売上高を前年同期比10%増の7億9,600万ドルまで伸ばし、同指標で10四半期連続の成長を達成した。
ノスタルジーを単なる懐古趣味として利用するのではなく、現在のクリエイターやデジタル文化と組み合わせることで、Gapは過去のブランド資産を新たな顧客層との接点へと変えようとしている。「Denim on Your Own」は、その戦略をデニムというブランドの中核カテゴリーで実践するキャンペーンと位置づけられる。(出典:MARKETING DIVE、画像:Gap)

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