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ラグジュアリーブランドが「メモリーメーカー」層を理解すべき理由とは

高級品市場における消費者の購買行動は年々変化しており、かつて重視されていたロゴやステータスシンボルの価値は相対的に薄れつつある。現在、多くの富裕層は、家族との思い出や将来受け継がれるアイテムなど、「体験」や「記憶」に価値を見出すようになっている。

新たに浮かび上がる消費者像:メモリーメーカー

Havas Media Networkが実施した最新の調査では、これまで英国市場を中心に行われていた分析を基に、中国と中東にも対象を拡大し、それぞれの市場における高額所得者層(HNWI:年収25万ポンド以上または流動資産100万ポンド以上)250人を対象に調査が行われた。調査対象者はいずれも、過去1年以内に自動車を除く高級品を購入した経験を持つ。

この調査では、従来の3つの高級消費者セグメントに加え、新たに「メモリーメーカー」と呼ばれる第4のグループが台頭していることが明らかになった。

なぜこの傾向が重要なのか

Havas Media Luxの戦略パートナーであるチェリー・コリンズ氏は、先日開催されたIPAコンシューマー・インサイト・カンファレンスにて、「ラグジュアリー業界は今、激動の時期にある」と語った。数年間の成長期を経て、2024年には業界の成長スピードが急減速するとの見通しが立てられており、「不確実性が続く今こそ、ニッチなビジネスチャンスを見極めることが不可欠だ」と指摘する。

4つの高級購買層の特徴

  1. 若返りの喜びを求める層
    このセグメントの顧客は、これまで季節ごとに新しいバッグや靴を購入していたが、現在ではファッションだけでなく、旅行、美容、ジュエリーといった「自己投資」の体験にも注目している。Havasのインサイトパートナーであるルース・オニール氏は、「リュクスへの入り口は広がりを見せており、自分を喜ばせる手段が多様化している」と説明する。
  2. 品質志向の層
    「静かな贅沢」を好むこの層は、ブランドの本質やクラフトマンシップに注目する傾向がある。素材、製法、歴史といった要素に価値を見出し、それらのストーリーがブランドとのエンゲージメントを深める鍵になっている。
  3. 贅沢好きの層
    これまでのようにロゴや高額商品によって社会的ステータスを示す傾向はあるものの、現在では「自分の価値観と合致するか」「共感できる理念があるか」といった視点からブランドを選ぶようになっている。
  4. メモリーメーカー(新たに注目される層)
    このグループは、自分自身の生活を見つめ直し、「時間とお金をどこにどう使うか」に対する意識が高い。高級時計やジュエリー、そして特別な旅行などを通して、形に残る体験や家族と共有する時間に投資している。「実際に贅沢品を購入する行為そのものが体験の一部であり、彼らにとっての喜びなのです」とオニール氏は語っている。

今後のラグジュアリーブランドに求められる視点

このように消費者層が多様化し、特に「メモリーメーカー」のような体験重視型の購買行動が台頭する中、ラグジュアリーブランドにとっては単に製品の機能や価格帯で勝負するのではなく、「記憶に残る体験」や「パーソナルな価値」といった、より感情に根ざしたアプローチが必要不可欠になっている。今後、ブランドが競争優位を築くためには、消費者の内面的な動機に寄り添い、製品そのものにとどまらず「物語」や「瞬間」を提供できるかどうかが大きな鍵となるだろう。(出典:WARC、Havas Media Network)

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