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ジャガー、EVブランド刷新で販売台数が急減:再出発の商業的空白とリスク

ジャガーの2025年4月の欧州販売台数は、前年同月の1,961台からわずか49台へと97.5%減少した。この急激な落ち込みは、同社が進めるオール・エレクトリック(EV)ブランドへの再編と関連しており、ブランド刷新の過程で商業的な空白が生じたことを示している。ジャガーは、「Reimagine」計画のもと、2025年から2026年にかけてEVに焦点を当てた新たなスタートを切ろうとしているが、現在その移行は思わしくない。

ブランド再構築と商業的空白

ジャガーは、従来の内燃機関(ICE)車両の生産を停止し、EVへ移行する決定をした。しかし、ラインナップのほとんどを廃止した結果、既存の顧客は製品の選択肢がないため離れ、ディーラーは売上を失うという状況に陥った。この「空白」の期間中、販売台数が急減し、ブランドの存在感が消費者の目から消え去ることになった。

特に、ジャガーは2025年4月において、欧州市場での販売台数が49台と激減した。この現象は、ジャガーのブランド戦略が十分に市場に浸透していないことを浮き彫りにしており、特に「bZ」バッジをはじめとする新しい車両モデルが市場に登場する前の段階で、顧客の関心を引きつけることができなかった。

 

競合ブランドとの対比:BMW、メルセデス・ベンツ、アウディの戦略

ジャガーのライバルであるBMW、メルセデス・ベンツ、アウディは、それぞれ内燃車、ハイブリッド車、EVを同時に提供し、安定した市場シェアを維持している。BMWは、i4やiXのようなEVを新たに追加する一方で、3シリーズやX5といった主力製品を削除することなくラインアップを拡充している。このアプローチにより、2025年第1四半期に6.2%の欧州販売台数の伸びを達成した。

メルセデス・ベンツも、従来のモデルを販売し続けながらEQテクノロジーを統合し、安定した成長を維持している。アウディも同様に、EVと内燃機関車両をバランスよく提供し、市場シェアを確保している。これらのブランドは、急激な変化ではなく、段階的な移行を通じて認知度と信頼を維持している。

ジャガーの再出発の課題と今後の展望

ジャガーが目指すのは、より高級なEVセグメントへの参入であり、これにより既存の顧客層の85%を失う覚悟を決めたようだ。ジャガーのマネージング・ディレクターであるロードン・グローバーは、EVの普及が進むS字カーブの中で、2030年までには電気自動車が主流となると予測している。しかし、再出発が本格的に始まるのは2027年であり、それまでの期間は市場における空白が続くことになる。

新しいEVモデルが登場することで、ジャガーが復活する可能性はあるが、現在のところそのビジョンがどれほど実現するかは不透明である。特に、競争が激化する自動車市場で、販売台数をわずか49台にまで落とすという事態は、自ら追放されたかのような印象を与える。

ブランド・ポジショニングと再発明のリスク

ジャガーがほぼ全製品ラインを廃止する決定を下したことは、商業的なリスクを伴う大胆な選択であった。長年の顧客を捨て、ディーラーを収益から遠ざけることは、ブランド・ポジショニングにおいて非常に危険な戦略であると考えられる。再発明が必要である一方で、既存の顧客層をどのように維持するかが課題となっている。

世界の最も競争の激しい自動車市場で販売台数を急減させることは、単に市場の変化を反映するだけでなく、ブランドの存在感を消失させる結果を招く可能性がある。ジャガーが再出発を果たすためには、魅力的で高性能なEVモデルを提供し、信頼を取り戻す必要がある。

ジャガーのアプローチは、ブランド・エクイティを築くのではなく、むしろ消し去ってしまう危険性を孕んでいる。このままでは、創造的なリブランドを試みた結果として、消費者からの信頼や認知を失うリスクが高まるだろう。ブランド再出発には、過去の遺産を受け継ぎつつ、新しい方向性を打ち出す必要がある。再発明には大きなリスクが伴うが、成功を収めるためには、適切な戦略とタイミングが求められる。(出典:DesignRush, Jaguar 他)

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