ジャガー、EV時代への転換を象徴するリブランディングを発表
(写真:Jaguar Motors)ジャガーは、ブランドの象徴であった「グロウラー」ロゴを廃止し、電動化時代に向けた新たなブランドアイデンティティを発表した。伝統的なスポーツカーブランドから高級電気自動車(EV)ブランドへの大胆な変革を遂げるため、ロゴやカラーパレットなどビジュアル面での全面刷新を行った。
EV市場への完全移行
親会社であるジャガー・ランドローバー(JLR)の傘下で、ジャガーは2025年までにすべての車両を電動化する計画を進行中である。新型車両の価格は従来モデルの約2倍に設定される予定で、若く裕福で持続可能性に関心を持つ新しい顧客層をターゲットにしている。
ブランドの刷新は、新たなEVラインナップに対応するためだけでなく、長年の販売不振を打破する狙いも含まれている。ジャガーの世界販売台数は2017年の17万9,000台から2023年には4万3,000台にまで減少しており、この状況を打開する必要性があった。
新しいロゴとビジュアルアイデンティティ
ジャガーのリブランディングの中核をなすのが、新たに採用されたロゴである。これまでの「グロウラー」ロゴに代わり、シンプルな小文字のサンセリフ書体を使用したモダンなワードマークが採用された。このデザインは、20世紀的なイメージを脱却し、ハイテク志向の現代的なブランド像を反映している。
さらに、跳ぶジャガーをモチーフにした「リーパー」ロゴも新たにデザインされ、ブランドの伝統と革新を象徴する存在として採用された。
カラーパレットと未来志向のデザイン
新しいカラーパレットは、ゴールドを基調にイエロー、レッド、ブルーのアクセントカラーを取り入れ、豪華さとモダニズムを兼ね備えた美学を追求している。この配色は「画家のパレットにインスパイアされた」とされ、ラグジュアリーと革新性を両立したデザインを表現している。
また、未来的なコンセプトビデオも公開され、新しいブランドの方向性を視覚的に強調している。このビデオは、ジャガーの「豪快なモダニズム」というコンセプトを象徴する内容となっている。
歴史的ブランドの再定義
ジャガーは20世紀を通じて、E-Typeなどの象徴的なモデルで革新的なデザインを追求してきた。しかし近年はその存在感が薄れつつあり、今回のリブランディングはブランドの再定義と市場での復活を目指す重要な一手である。
マネージングディレクターのロードン・グローバー氏は、「新しいロゴとデザインは、ブランドのリセットを象徴するものです」と述べている。同氏はまた、新しい顧客層がジャガーを選ぶことで、ブランドの未来が再び輝くと確信している。
EV市場での競争と未来展望
ジャガーはEV市場において、他の自動車メーカーと同様にブランドのビジュアルアイデンティティを刷新することで差別化を図ろうとしている。ゼネラルモーターズやアウディも同様の動きを見せており、電動化に伴う新たな顧客層へのアプローチが共通のテーマとなっている。
グローバー氏は、新たなEVモデルの80~90%が初めてジャガーを購入する顧客になると予測しており、ブランドにとって重要な転換期となることを示唆している。
ジャガーのリブランディングは、単なるデザインの刷新にとどまらず、電動化の時代における新たな市場戦略を象徴するものである。この挑戦が成功するかどうかは、今後の市場の反応にかかっている。(出典:Fast Company, BBC, Verge他)