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AIインフルエンサーと、それを起用するブランドへの反発が高まる

AIインフルエンサー現象の拡大と功罪

AIファーストの紹介・インフルエンサーマーケティング基盤を提供するMention MeのCEO、ヴォイテク・ココシュカは、AIインフルエンサーが急速に一般化している現状を指摘する。

元祖格のリル・ミケーラ登場以降、生成技術の進歩で表現は洗練され、映画・音楽領域にまで“バーチャルな担い手”が広がった。一方で、ブランド契約で巨額の収益を上げる成功例が生まれるほど、論争も拡大しているのが実情である。

感情の変化:生活防衛下の消費者と「安価な代替」への不信

生活コスト上昇の最中に、愛用ブランドが“人間のクリエイター”ではなく“安価なAIの代替”を選ぶ光景は、ファンの反感を招きやすい。短期のコストメリットと、長期の関係性価値のどちらを優先すべきかという命題が突きつけられている。熱狂の初期段階を越えると、AI制作物は“フェイクニュース的”とみなされ、擬人化された機械を推すブランドへの反発が表面化しやすい。

成功と逆風の同居:リル・ミケーラの事例

リル・ミケーラはBMW、カルバン・クライン、プラダなどの大型案件に起用され、2023年には約740万ポンド規模の収益を上げたと報じられる。2018年のミラノ・ファッション・ウィークでは、プラダのInstagram“乗っ取り”で舞台裏コンテンツを配信し話題を集めた。

しかし潮目は変わりつつある。骨髄ドナー啓発を目的に“白血病診断”のストーリーを発表した際には、意図の崇高さにもかかわらず手法への疑義が噴出。英国メディアSheerLuxeが“新メンバー”として実はAIを導入した件でも、ファンの反発を招いた。人とAIの境界を拡張する振る舞いは、信憑性重視の消費者にとって許容性が低いという現実が見えてきたと言える。

置き換えの誤解:AIの“短期収益性”だけを見るリスク

インフルエンサーマーケティングの効果自体は確立している。アンバサダープログラム導入ブランドは顧客維持率が平均+37%、TikTokユーザーの78%はクリエイターの紹介後に商品を購入したと回答する。投資対効果でも、1ポンド投下あたり平均6.50ポンド、上位13%は20ポンド超のROIを示すデータがある。

にもかかわらず、“人間のクリエイターをAIの模造品に置き換える”方向に振れれば、長期のブランド資産を毀損しうる。核心は、人間の信頼性・体験価値をどう拡張するかであって、代替ではない。

探索・選抜・運用の“拡張”としてのAI

AIの本領は、人間の創造性を置き換えるのではなく、プログラムの規模と精度を底上げする“拡張”にある。具体的には、

  • 発掘・選抜:膨大なソーシャルプロフィールを横断し、顧客基盤内の本物志向かつ高パフォーマンスなマイクロインフルエンサー/ブランドアンバサダー候補を抽出・審査する支援。
  • 運用・最適化:収益・紹介・LTVといったKPIに紐づけてキャンペーン効果をトラッキングし、クリエイティブや配分をリアルタイムで最適化する。
  • スケール:地域・言語・カテゴリを跨ぐテストと学習ループ(有機的グロースループ)を構築し、人的運用の限界を突破する。

この方向であれば、人間の信頼性を核にAIで“面と精度”を伸ばすことができる。

ブランドへの指針:本物の代弁者を中心に据える

消費者は“人間のふりをする機械”を好まない。短期の目新しさより、リアルな生活体験に裏づけられた語りに価値を見いだす。ゆえにブランドは、既存顧客やコアファンの中から真のアドボケイトを見極め、AIで探索・評価・運用を加速し、創作と語りは人間中心で進める、という設計が望ましい。長期的には“本物のアドボカシー”を選ぶ企業が信頼と成長を手にするのであり、AIはその道筋を広げるツールであるべきだ。(出典:Luxury Daily)

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