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US:米連邦裁判所、グーグルのアドテク独占を認定─デジタル広告市場に大きな転換点

米連邦裁判所は、グーグルがアドテクノロジー分野で独占禁止法に違反していたとする判決を下した。この裁定により、グーグルは今後、自社の広告技術部門の一部を手放すことを余儀なくされる可能性がある。最終的にどのような構造改革が命じられるかはまだ明らかではないが、本件は近年において最も注目を集めるハイテク企業への反トラスト訴訟のひとつとされている。

違法な技術連携と反トラスト法違反の詳細

判決では、グーグルが広告配信に不可欠な2つの分野、すなわちパブリッシャー向け広告サーバーとアドエクスチェンジにおいて支配的地位を不当に維持し、反トラスト法に違反していたと認定された。広告サーバーとは、広告主が広告在庫を管理するためのシステムであり、アドエクスチェンジは広告枠をリアルタイムで売買する取引所の役割を果たしている。グーグルはこれらを自社の技術(旧ダブルクリック・フォー・パブリッシャーズ=DFP)を通じて不当に連携させたとされた。

判事であるレオニー・ブリンケマ氏は、「グーグルの排他的行為は競合他社の競争力を削ぎ、広告主やパブリッシャー、さらにはオープンウェブにおける情報消費者にも深刻な損害を与えた」と指摘している。

この訴訟では、米司法省がグーグルに対し、複数のアドテク関連事業での市場独占を行っていると主張。証人として出廷したIndex ExchangeのCEOアンドリュー・カセール氏は、「これは、よりオープンで競争力あるインターネットの時代の幕開けである」と述べ、裁判の初日を「人生で最も威圧的な経験のひとつ」と振り返った。

広告主向けサービスには違法性認められず

なお、今回の判決ではグーグルの広告主向けツールに対しては違法性が認められなかった。裁判所は、広告主ネットワークに関しては独立した市場とする司法省の主張を退け、バイサイド(広告を購入する側)では独占は存在しないとの判断を示した。

一方で、AdXとDFPの結びつきについては、品質やセキュリティの正当な理由が認められなかった。証言によれば、グーグルのアドテクスタックは、詐欺やマルウェア、スパムへの対応力において他社と比べて優れていないとされている。カセール氏によると、ヘッダー入札の方がリスクは低く、また広告代理店グッドウェイ・グループのCEOジェイ・フリードマン氏も、大手アドエクスチェンジは同等の品質の広告在庫を提供していると証言した。

ブリンケマ判事は、グーグルが両者の連携を正当化する理由は「口実に過ぎず、真の目的は市場支配の維持と拡大であった」と断じている。この判決は、グーグルの広告関連サービスの売却を含む是正措置の検討を可能にし、デジタル広告取引の在り方を根本から変える可能性を秘めている。

市場への影響と将来的な救済措置

市場調査会社eMarketerによれば、グーグルは米国デジタル広告市場(総額約3,030億ドル)の25.6%を占めており、メタ(21.3%)やアマゾン(13.9%)を抑えて首位を維持している。

今後、裁判所はGoogleに対し、どのような具体的措置を命じるのかを検討していく。中には、Google Chromeの売却案も含まれており、アドテク部門の一部または全部の分離・売却が求められる可能性もある。

広告の透明性を訴える団体「Check My Ads」の最高執行責任者であるアリエル・ガルシア氏は、「本日の判決は、広告主、パブリッシャー、業界全体、そして一般市民にとって喜ばしいニュースだ」と歓迎の意を示した。

これに対し、グーグルの規制対応担当副社長リー・アン・マルホランド氏は声明を発表し、「我々は本件の半分で勝訴しており、残りについては控訴する予定である。裁判所は我々の広告主ツールや過去の買収行為が競争を阻害しないと認定したが、パブリッシャーツールに関する判断には同意できない」と述べた。加えて、「多くのパブリッシャーがグーグルを選ぶ理由は、同社のアドテクツールがシンプルで手頃、かつ効果的だからである」と主張している。

この裁判の動向は、広告業界のみならず、デジタルプラットフォーム全体に影響を及ぼす可能性がある。今後の展開が注目される。(出典:MediaPost, EMarketer, AdAge、NY Times他)

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