
ディズニー2025年通期決算:エコシステムが生む持続的な勢い
ディズニーが現在取り組んでいるのは、百年以上にわたって築かれてきたエンターテインメント企業の枠を超え、同社全体をデジタル主導の成長エンジンへと変貌させることだ。ストリーミング事業の拡大、ファンとの直接的な関わりの増加、そしてテーマパークやクルーズといった体験型コンテンツが、企業全体の推進力を形成している。
デジタル・ファースト企業への転換
ウォール街が注目しているのは、ディズニーが本当にデジタル・ファースト企業へ転換できるのかという点である。急成長を続ける「Disney+」は、同社が保有するテレビ、映画、テーマパーク、クルーズなどの巨大な事業群の一部にすぎない。しかし、強力な知的財産を土台にしたストリーミングと、新しい形へと進化しつつある配信基盤の融合は、大きな成長余地を生み出している。ボブ・アイガーCEOは決算説明会で、ディズニーファンとのつながりを強化する機会が「これまで以上に広がっている」と述べたうえで、パーク、ホテル、クルーズなど複数の事業を横断し、ファンの関与を高める仕組みを構築することで新たな商機を創出する意図を示した。
2025年第4四半期・通期の業績概要
2025年第4四半期の業績は横ばいで市場の予想をやや下回ったものの、通期の売上高は前年比3%増の944億ドルとなり、ストリーミング部門の利益改善が顕著であった。ディズニーは、ストリーミング事業全体の営業利益率が2026年度に10%へ到達すると見込んでおり、25年度の5%から大幅に改善する計画である。Disney+とHuluの契約者数は1240万件増加し、世界全体では1億9570万件に達した。その増加分の約半数は米国のケーブル企業Charterとの契約に基づくもので、残りは国際市場での伸びが占めている。

ストリーミングと放送のはざまで
一方で、映画とテレビの分野は苦戦しており、マーベル作品に対する需要が弱まった影響で興行収入が予想を下回り、事業全体の営業利益は5%減少した。従来型のテレビネットワークも21%の減益となった。しかし、ディズニーは中期的にはDTC(Direct-to-Consumer)領域の収益性向上によって全体の利益構造が改善すると見ている。
さらに、同社は現在YouTube TVとの配信契約を巡って交渉中だが、財務責任者のヒュー・ジョンストン氏は「どのような状況にも対応する準備ができている」と述べ、問題を乗り越えられるとの自信を示した。短期的な摩擦よりも、長期的なデジタル戦略の遂行を優先する姿勢がうかがえる。
パーク&クルーズがけん引する体験ビジネス
テーマパークとクルーズを中心とした「エクスペリエンス部門」は、600億ドル規模の投資計画の中核を担っており、営業利益は前年同期比13%増の18億8000万ドルに達した。来場者の安定した増加やクルーズ船の拡張計画が奏功し、ディズニーの体験型事業は今後も全体の収益基盤を支える存在であり続けるとみられる。
総じて、ディズニーは映像、体験、商取引を単一のエコシステムとして一体化させる戦略を推し進めている。ファンが作品を視聴し、テーマパークを訪れ、関連商品を購入し、さらにはクルーズで物語世界を体験するという循環が、同社の事業構造全体を強固なものにしている。ストリーミングの黒字化、パーク事業の堅調な伸び、ブランド力を軸とした事業横断の連携が組み合わさることで、ディズニーは100年企業でありながら、再び積極的に変化を追求する企業へと進化していると言える。(出典:Disney, WARC.)
















