
ノートから「まなびかた」へ─コクヨ「Campus」ブランド、50年目の転換
コクヨのノートブランド「Campus」が、「ノート」そのものではなく「まなびかた」を提案するブランドへと転換してから2か月が経った。半世紀にわたり学生の象徴であり続けたこのブランドは、2025年9月に「まなびかたブランド」への刷新を正式発表した。発売から50年、累計販売37億冊という圧倒的な実績を持つブランドの転換は、単なるデザイン変更ではなく、学びの在り方そのものを問い直す挑戦である。
目次
学びの個性化に対応する「まなびをデザインするブランド」
コクヨが打ち出した新たな方向性は、「まなびをデザインするブランド」という考え方に集約される。ノートという道具が担ってきた「記録」「整理」「理解」といった機能を越えて、学びの過程そのものを支援する――それが今回のブランド再定義の核だ。背景には、教育現場で進む学びの個別化と探究学習の広がりがある。学生が自ら問いを立て、試行錯誤を重ねながら学ぶ時代に、従来の「良いノート=きれいにまとめる」という価値観は通用しない。むしろ、失敗や発想の飛躍を含む「まなびのプロセス」を支援する道具が求められている。

「まなびレシピ」で広がる体験提案型マーケティング
刷新後のCampusが象徴的に掲げたキーワードが「まなびレシピ」だ。料理にレシピがあるように、学びにも自分に合った方法があるという発想である。ブランドサイトでは、モチベーション維持や時間活用、復習の習慣化など、学生が抱える具体的な課題に応じた「まなびレシピ」が紹介され、文具とメソッドを掛け合わせて提案している。この試みは、単に新製品を並べるのではなく、「どう使うか」「どう考えるか」という体験設計の領域に踏み込んでいる点で、従来の文具マーケティングとは一線を画す。

プロダクトを越えた「まなびの道具」体系へ
商品ラインアップも刷新の意図を明確に示している。ノートやルーズリーフのような定番品に加え、開いたまま教科書を固定できるブッククリップや、思考の断片を貼って整理できるロールふせん、スキマ時間の学習に適したA7サイズのルーズリーフなど、いずれも“まなび方”から逆算して設計されている。こうしたアイテム群は、文具というよりも「学びの道具」としての体系を志向しているように見える。
ブランドカラーとデザインに宿る新しい情緒
デザイン面では、「まなびかたをもっと明るく」というコンセプトのもと、ブランドカラーに「Campus SKY BLUE」を採用。従来のノートに見られた堅さを脱し、明るく軽やかな印象へと生まれ変わった。学びの体験を重く感じがちな学生に対し、ポジティブな情緒を喚起する狙いがうかがえる。

価格戦略の二極化が示すブランド価値強化の意志
さらに注目すべきは、価格戦略の明確な二極化である。低価格帯の100円ノートシリーズを維持しつつ、付加価値型の高価格帯製品を拡充する方針が打ち出された。これにより、コクヨは価格競争に依存しないブランド価値の強化を図っている。ノート市場が成熟しきったなかで、モノではなく「体験」で差別化を試みる戦略は、文具業界における一つの潮流を象徴している。
ブランド刷新の行方―「学びの相棒」としての次の50年へ
半世紀にわたり“学ぶ人のそばにあったブランド”が、これからの学びの形にどう寄り添うか―その問いへの答えを、コクヨは市場との対話の中で模索している。Campusの刷新は、単なる製品リニューアルではない。教育の変化を的確に捉え、企業ブランドとしての存在意義を再構築する動きである。ノートのブランドが「まなびのブランド」へと進化した今、コクヨは自らの原点―“人の創造を支える”という理念を、次の50年の形に更新しようとしている。(出典:コクヨ)
















