
電通、2025年上半期は減収 ― 国際事業の苦戦続く
電通グループが発表した2025年上半期決算によると、既存事業売上高は前年同期比で0.2%減少し、わずかながらマイナス成長となった。通期見通しについても、従来の1%成長予測から「ほぼ横ばい」へと下方修正した。一方で、営業利益率12%という目標は維持している。
日本市場の堅調な伸び
国内事業は引き続き堅調で、上半期の既存事業売上高は5.3%増と大きく伸長した。特にインターネット・メディアやビジネストランスフォーメーション・サービスが二桁成長を記録し、全体を押し上げた。第2四半期単独でも5.1%増を達成し、純収入は1,070億円(約9億7,000万ドル)に到達。これで日本市場は9四半期連続でプラス成長を実現し、そのうち直近3四半期は5%超の伸びを続けている。
海外事業の停滞
これに対して、海外事業は依然として厳しい状況が続いている。日本を除くアジア太平洋地域では、第2四半期の既存事業売上高が12.7%減と大幅に落ち込み、上半期全体でも8.9%の減少となった。特に中国とオーストラリアが打撃を受け、カスタマーエクスペリエンス・マネジメントとクリエイティブ分野の不振が要因とされる。一方で、台湾やタイは比較的堅調な成績を残した。
米州では減少幅が縮小し、第2四半期は1.6%減にとどまった。上半期では3.4%の減少だったが、メディア事業とカスタマーエクスペリエンス事業の安定が回復の兆しを示している。欧州・中東・アフリカ地域(EMEA)は第2四半期に3.8%の減収となり、上半期全体でも2.4%減と社内目標を下回った。
リストラとコスト削減計画
電通は国際事業の改善に向け、構造改革とリストラを加速している。2027年度までに営業利益率を16~17%に引き上げる戦略の一環として、年間約520億円のコスト削減を計画。特にコーポレート部門や間接部門を中心に、全従業員の約8%にあたる3,400人を削減する方針である。
五十嵐弘社長兼グローバルCEOは「日本事業は売上高・営業利益ともに過去最高を更新し、9四半期連続の成長を達成した。しかし海外事業は全地域でマイナス成長が続き、全体的には厳しい結果となった」とコメントした。下半期については、日本の成長基調が継続すると見込む一方、海外ではメディア事業で一定の回復が期待されるものの、顧客体験やクリエイティブ分野の立て直しには時間を要する見通しだ。
第2四半期には、のれんの減損860億円および子会社株式の評価損1,681億円を計上。いずれも非現金費用であるが、利益剰余金を大きく押し下げた。その結果、中間配当は1株あたり69円75銭を無配とし、期末配当の予想も撤回された。
- 主要財務指標(2025年上半期)
- グループ純収入:5,620億円(前年同期比 -2.1%)
- 既存事業売上高成長率:-0.2%
- 営業利益率:12.0%(前年同期比 +100ベーシスポイント)
- 日本:+5.1%(第2四半期)
- APAC(日本除く):-12.7%(第2四半期)
- 米州:-1.6%(第2四半期)
- EMEA:-3.8%(第2四半期)
(出典:電通グループ、Campaign Asia他)