• ニュース

ラグジュアリーブランドの明暗が分かれる要因は?

今期、世界のラグジュアリーブランドの経営者は大いに悩んでいる。背景には、第2四半期決算で多くの高級ブランドが厳しい結果を示し、ベテラン経営者でさえ対応策に苦慮している現状がある。

伸びるブランドと落ち込むブランドの差

最大手LVMHは全体で4%減、主力のファッション・レザー部門は9%減と後退した。ケリングは売上18%減、グッチは25%減と急落が続く。リシュモンは1%増と辛うじてプラスだったが、時計部門は13%減と不振。一方、エルメスは9%増と大幅な成長を記録し、ブランド運営の一貫性と卓越性が成果を生むことを改めて示した。

こうした数字が物語るのは、成長するブランドと急速に地位を失うブランドの差がかつてないほど広がっているという事実である。その差を分けるのは、ブランドストーリーの伝達力、顧客にインスピレーションを与える力、長期的な信頼構築の3点に集約される。

意味に裏打ちされたブランドエクイティ

高級市場はもはや製品品質だけで動くのではなく、感情やブランドとのつながり、そして「意味」が価値を決定づける。説得力ある物語を語れるブランドは成長を続け、そうでないブランドは収益や利益率の低下に直面している。

グッチはその典型例で、2年以上にわたり四半期ごとに減収が続く。かつての急成長を支えた独自で大胆なデザイン路線から一転、無難で控えめな方向に舵を切った結果、ブランドの声が曖昧化し、多くの顧客と信頼を失った。

対照的に、エルメスは一貫性と戦略的規律を守り抜き、時代を超えて支持される物語と品質を維持している。明確な感情的価値、希少性、厳格な品質基準が、変動の激しい市場でも揺るぎない需要を生んでいる。

レガシーだけでは未来を守れない

多くの課題はブランド自身が生み出したものでもある。顧客価値を高めぬままの価格上昇や、サプライチェーンの不透明さによる信頼失墜、広告不祥事による評判の悪化などだ。SNS時代では、こうした問題が瞬く間に拡散し、修復は困難になる。

さらに、Z世代の高級志向層は、単なる派手さやデジタル映えではなく、人間的なつながりやパーソナルな体験を求める傾向が強い。ブランドは彼らの価値観に沿い、あらゆる接点で共感や特別感を提供しなければならない。

今後の方向性

高級品業界は構造的衰退にあるのではなく、「期待する価値を提供できていない」ことが最大の問題である。ブランドが生き残るためには、外部環境のせいにするのではなく、自らの物語や体験が顧客の心を動かしているかを問い直す必要がある。

今行動できるブランドには大きな成長機会が残されているが、現状に抗わず変化を拒むブランドは、急速に存在感を失っていくだろう。(出典:Hermes, LVMH, Luxury Daily他)

最近のお知らせお知らせ一覧