ペプシコ、AIファーストのマーケティングへ。グローバル代理店選定を開始

食品・飲料大手のペプシコが、グローバル規模で広告代理店の選定を開始した。背景にあるのは、人工知能(AI)、データ、先進テクノロジーをマーケティング活動の中核に据え、従来のマーケティング体制を大きく転換しようとする動きである。
今回の選定では、主要な広告ネットワークに加え、経営コンサルティング企業などにも参加を呼びかけている。単なるクリエイティブ制作や広告コミュニケーションを担う代理店ではなく、テクノロジーやデータを活用しながら、マーケティング活動と事業成果を結びつけられるパートナーを求めているとみられる。

ペプシコは今回の見直しについて、商業的な詳細を明らかにしていない。しかし、その方向性は同社が掲げる「AIファースト」や「エージェント型AI」を取り入れた企業への変革構想とも一致している。
マーケティングの現場では現在、AIによる自動化、メディア運用の最適化、予測分析、生成AIを使ったコンテンツ制作などへの投資が急速に進んでいる。これに伴い、広告代理店にも、広告を制作して配信するだけではなく、テクノロジーを活用して企業の成長や業績にまで貢献することが求められるようになっている。
今回のペプシコの動きは、こうしたマーケティング業界全体の変化を象徴するものともいえる。

AIをマーケティングだけでなく企業活動全体へ

ペプシコが目指しているのは、AIを個別の実験や一部のプロジェクトだけに導入することではない。マーケティングをはじめ、意思決定、販売、業務プロセスなど、企業活動のさまざまな領域にAIを組み込むことを想定している。

そのためには、社内に蓄積されたデータとAI、マーケティングテクノロジーを相互に連携させる必要がある。マーケティング担当者が過去のデータを分析するだけではなく、リアルタイムの情報をもとに判断し、必要な施策を迅速に実行できる環境が重要になる。
ペプシコはすでに、そのための技術基盤づくりにも着手している。Google Cloudとは複数年にわたるパートナーシップを結び、Geminiを活用した機能を、アナリティクスや従業員の生産性向上、市場投入活動などの領域に展開することを目指している。
こうした仕組みがマーケティング活動と結びつけば、データを収集して分析するだけでなく、AIが意思決定を支援し、その結果を次の施策へ反映するという、より統合されたマーケティング環境を構築できる。

その意味で、今回の代理店選定は単なる広告業務の見直しではない。広告会社とテクノロジー企業、そして経営コンサルティング会社の役割が重なり始めている現在のマーケティング環境を反映した動きでもある。
これまで広告代理店は、ブランド戦略やクリエイティブ、メディアを中心に企業を支援してきた。一方で、AIやマーケティングデータの重要性が高まるにつれ、マーケティングインフラそのものに関わる役割も求められている。

クリエイティブ×データ×AIが新たな代理店選びの基準に

ペプシコが次世代のマーケティングパートナーに求める能力は、従来の広告代理店に求められてきたクリエイティブ力だけではないと考えられる。クリエイティブ、メディア、データ、AI、そしてビジネス戦略を横断し、それらを一つのマーケティング活動として機能させる能力が重要になる。

特にAIによって、コンテンツのパーソナライズやメディア運用の最適化、業務プロセスの自動化、消費者データからのインサイト抽出などが大規模に実行できるようになった。ブランドにとっては、AIを導入することそのものよりも、そこから得られる情報や効率化を、具体的なマーケティング成果や事業価値につなげられるかが重要になっている。
一方で、AIを導入すればマーケティングが自動的に高度化するわけではない。どのデータを使い、何を分析し、どのような顧客体験をつくるのかという戦略的な判断は依然として必要である。そのため、AIの技術力とマーケティングの創造性を組み合わせられる人材や組織の重要性はむしろ高まる可能性がある。

今回の選定によって、ペプシコのマーケティングをめぐるグローバルな競争も激しくなるとみられる。大手広告ネットワークだけでなく、コンサルティング会社やテクノロジー企業も、AIを軸としたマーケティング支援の領域で競合することになるからだ。
より大きな視点で見ると、今回の動きは、広告、マーケティングテクノロジー、経営コンサルティング、企業変革といった従来は別々に存在していた領域の境界が薄れていることを示している。
ペプシコがAIファーストのマーケティングを本格的に進めるのであれば、これからのパートナーには、斬新なアイデアを生み出す力だけでなく、データとAIを実際のマーケティング成果へ変換する能力が求められることになる。

つまり、次世代の広告代理店に必要なのは「広告をつくる力」だけではない。クリエイティビティ、データ、AI、メディア、そしてビジネス戦略を一体化し、企業の成長に結びつける力である。今回のペプシコの代理店選定は、その変化を象徴する動きといえる。(出典:MARKETING EDGE、画像:ペプシコ、Unsplash)

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