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マーケターが広告よりブランド再構築を優先する理由

ブランド構築への関心が高まるなかで、広告投資の活況と並行して、リブランディングの動きが広がりを見せている。

アジャイルで流動的な施策としてのリブランディング

ここ3年、多くのマーケターが話題性や注目を集めるような派手な広告よりも、リブランディング、ブランドのリフレッシュ、ポジショニング変更に重きを置いている。この傾向はクラフト・ハインツ、ユニリーバ、ペプシコといった消費財大手に加え、QSR(クイックサービスレストラン)、WayfairやTubiのようなデジタルネイティブブランド、そして顧客との新たな関係性を模索する代理店にも広がっている。

パンデミックが終息へと向かい、Z世代が多くのブランドにとって最重要ターゲットとなるなかでも、リブランディングの戦略的重要性は揺るがない。ブランド構築への再投資、チャネル横断型の戦略策定、消費者行動の変化に基づくインサイト活用など、マーケターが求める機動力と柔軟性を兼ね備えた手段としてリブランディングは機能している。

IPG傘下のFutureBrandで戦略責任者を務めるリン・フィールドは、「現代のブランドはすべて、破壊的変化が続く市場の中で、常に現代的で、関連性があり、機敏に変化に対応できる存在であることが求められている」と述べている。

パフォーマンス・マーケティングとブランド構築のバランス

パフォーマンス・マーケティングはROIが明確な施策として今なお多くの予算を占めているが、一部のマーケティングリーダーにとっては限界が見えつつある。既存顧客ベースには成長余地が少なく、価格以外で差別化できるブランドエクイティを築けていない企業も多い。

eMarketerの調査によれば、世界中のマーケターの36%が2024年中にブランド・マーケティングへの投資を増やす予定であるとされている。

BrandOpusのクリエイティブ戦略ディレクターであるクリス・アーテルは、「マーケターの多くは、消費者を本当の意味で理解できていないか、インサイトが的外れであることに気づき始めている」と指摘している。「誰が実際に自分たちのブランドを購入しているのかが見えなくなっている」と語る。

振り子の揺り戻し

Kantarの『Blueprint For Brand Growth』レポートによると、ブランド構築活動は短期的なパフォーマンスマーケティングに依存することなく、持続的な成長を可能にするとされている。

同レポートでは、ブランドに対する消費者の好感度を高める要因として、優れた顧客体験、機能性と性能、幅広い製品提供とデザイン、利便性、魅力ある広告という4つの要素を挙げている。

カンターのグローバル・ソート・リーダーシップ担当EVPであるジェーン・オスラーは、「かつてブランドマーケティングに注力していた企業が、今あらためてブランドに十分なエクイティが備わっていない現実に気づいている」と述べている。

ブランド拡張とリブランディング

ブランドが単なる「ウェブサイト上の名前」にとどまらず、消費者と深い関係性を築くためには、ブランドの進化が求められる。D2Cブランドの多くは店舗展開を進めており、それに応じたルック&フィールやインサイトに基づくブランドストーリーが必要となっている。

一方で、レガシーブランドは現代的な視点でのブランドストーリー再構築や、新たな顧客層への拡張を通じて進化を遂げる必要がある。

Siegel+Galeの環太平洋地域代表であるジェイソン・シースラックは、「大手CPG企業のマーケターは、比較的固定された市場の中で小さなシェアを競い合うという、困難な任務に取り組んでいる」と述べる。

また、デザインはブランド拡張における最も効果的なコミュニケーション手段であり、象徴的なビジュアルアイデンティティは新たなカテゴリー展開を後押しする鍵になるとも語っている。

デザイン主導の再構築

混雑した市場において、リブランドは単なるクリエイティブ発想ではなく、インサイト主導によって推進されるべきである。クラフト・ハインツのミオでは、BrandOpusが製品のコア・プロポジションである「カスタマイズ」に着目し、「あなたの波長に合ったウェルネス」というコンセプトを軸に、ブランドの一日を通した体験への統合方法を見出した。

BrandOpusのアーテルは、「核となるインサイトが明確になれば、必要なブランド資産の開発を進め、そこから有機的にメタファーが生まれる」と述べている。

Manischewitzのような伝統ブランドも、若年層や多様な顧客層との接点を持つために、コーシャ食品の枠を超えた大胆なリブランドを実施した。Jones Knowles Ritchieが手がけたこの取り組みは、ブランドの将来像とパーパスを明確にするうえで有効であった。

Siegel+Galeのシースラックは、「ニッチなカテゴリーにとどまっていたブランドでも、広い文脈に位置づけ直すことで新たな価値を生み出せる」と述べている。

慎重な姿勢でのブランド刷新

マーケターはブランドのリフレッシュを検討する際、ここ数年で状況が大きく変化したことを意識する必要がある。従来は、ブランド・アイデンティティの中核は不変であり、クリエイティブ・キャンペーンこそが柔軟な調整手段と考えられていた。

だが今日では、優れたマーケターはブランド・アイデンティティとキャンペーンを統合的に用い、パーパスと体験の提供を実現している。

FutureBrandのフィールドは、「ブランド・アイデンティティは、感情的な絆やブランドへの愛着を生み出すために柔軟に使えるツールである」と表現している。

とはいえ、ブランド・アイデンティティの中核部分を変える際には慎重さが求められる。テクノロジー企業の影響でミニマリズムに傾倒していた一部のブランドは、アイデンティティやエクイティを失っていた。そうした傾向に対し、近年ではペプシの成功やSkittlesのようなブランドによる最大主義的なアプローチが再評価されつつある。

加えて、マーケターは単なるパッケージ変更にとどまるのか、それとも新たな顧客のための本質的なリブランドなのかを見極める必要がある。

Siegel+Galeのシースラックは、「デザイン変更がリブランドとしてもてはやされることはあるが、それは実際には見た目の更新に過ぎず、本質的な変化ではないことも多い」と警鐘を鳴らしている。

パフォーマンスからブランド構築への回帰

リブランド、リフレッシュ、ポジショニング変更、デザインの更新。これらの境界が曖昧であるにもかかわらず、マーケターたちは、長年にわたるパフォーマンスマーケティング偏重から、ブランドの根幹構築へと振り子を戻しつつある。

シースラックは、「人々がオフィスに戻り、外の世界に戻ることに抵抗がなくなった今、ブランドは社会にどのように存在感を示すかを再考するようになっている」と締めくくっている。

(出典、画像:MARKETING DIVE)

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