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グーグル2025年第2四半期決算─広告の混迷をAIと動画で乗り切る戦略の実態

関税による経済の不安定化や、生成AIの急速な普及がデジタル広告の構造を揺るがす中、グーグルの2025年第2四半期決算は、そうした不透明な環境をものともせず、堅調な成長を示した。

アルファベットの最新の決算報告によれば、広告収益全体は前年同期比で10.4%増の713億ドルに達した。なかでも中核セグメントである「検索とその他」は12%増の542億ドル、YouTubeは13%増の98億ドルという伸びを見せた。アナト・アシュケナジCFOは、検索の成長は業界全体に広がっており、特に小売や金融サービス分野が業績を牽引したと説明している。

数字で読み解く第2四半期の成長要因

  • 542億ドル:検索とその他の広告収入。AIが検索のあり方を変えつつあるが、現時点では直接的な収益への影響は限定的。
  • 200万社:Googleの生成AIツールを活用して広告を出稿する広告主の数。前年比で50%増加。
  • 400億時間:年間でYouTube上のスポーツコンテンツの総視聴時間。

グーグルが展開する生成AI関連の広告商品群は、AI Max for Searchキャンペーン、Smart Bidding Exploration、Demand Gen、Asset Studioなど多岐にわたる。これらは、キャンペーンの最適化だけでなく、広告クリエイティブの生成にも貢献しており、広告主の間で急速に導入が進んでいる。Googleの広告部門を統括するフィリップ・シンドラー氏は、広告主によるAIアセット生成ツールの活用が前年から50%増加し、200万社に達していると明かしている。

広告の収益化とAIの関係性

生成AIを用いた「AIオーバービュー」は、検索クエリに対して要約的な回答を提示するテキスト機能であり、すでに月間アクティブユーザーは20億人を超えている。また、長文検索や複雑な検索に対応する別のAIモードも、米国とインドを中心に1億人超のユーザーを獲得している。

シンドラー氏は、AIによる検索体験の刷新は収益モデルにおいても「これまでと同等の水準での収益化が確認されている」と述べ、従来の検索広告との共存可能性を示唆した。

フォレスターのアナリストであるニヒル・ライ氏は、「GoogleのAI広告製品はパフォーマンスという点で成功を収めている一方で、広告主側は透明性やコントロールを犠牲にしている」としつつも、限られた予算で成果を求める広告主にとっては引き続き有効な選択肢であると分析している。

YouTubeの成長と動画広告戦略の深化

第2四半期のもう一つの柱はYouTubeである。ショート動画機能「Shorts」は、TikTokの競合機能として位置づけられ、現在1日の再生回数は2000億回を超えている。ピチャイCEOによれば、米国ではこのShortsが従来のインストリーム広告と同水準の時間単位収益をあげているという。

また、YouTubeはテレビ向けの本格的な戦略を進めており、ニールセンのデータでもストリーミング市場における主要プレイヤーとしての地位を確立しつつある。2025年9月には、初のNFL独占試合をYouTube上で配信する予定であり、YouTube TVはすでに「NFL Sunday Ticket」も提供中である。スポーツ中継への注力は、プラットフォーム全体の視聴時間を押し上げており、年間で400億時間を超えている。

しかしながら、Googleの広告ビジネスにはいくつかの懸念材料も存在する。反トラスト法を巡る規制強化、ChatGPTなどAIライバルの台頭、さらには地政学的リスクを伴う貿易摩擦の影響などが今後の不確実要因として挙げられている。さらに、2024年の大統領選挙に向けて政治広告の出稿が増える一方、2025年は比較対象が不利となる可能性がある。シンドラー氏はこれについて「今年後半の動向については時期尚早であり、現時点ではコメントを控える」と述べている。

総括

AIと動画、特にYouTubeと検索領域におけるAI統合が、Googleの広告収益成長を牽引している。生成AIによる効率化は、広告主のニーズに応える形で進化しており、複雑化する広告エコシステムの中でGoogleが競争優位を保ち続けるための鍵となっている。ただし、同社を取り巻く外的要因は不安定であり、今後の展開には依然として注視が必要である。AIがもたらす利便性と収益性の両立は、今後の広告業界全体にとっても重要な課題である。(出典:Google, Digital Marketing Dive他)

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