
AIはZ世代がキャリアをスタートさせるのに必要なエントリーレベルの仕事を「壊している」、リンクトイン幹部が警告
AIがZ世代のキャリアスタートに影響を与える可能性
リンクトインのチーフ・エコノミック・オポチュニティ・オフィサーであるアニーシュ・ラマン氏は、人工知能(AI)が伝統的に若い労働者がキャリアをスタートさせるための足がかりとなってきた職種を脅かしていると警告している。この現象は、1980年代の製造業の衰退と似ており、特にZ世代の新卒者にとって厳しい現実となる可能性があると指摘されている。
ラマン氏によると、AIが導入されることで、これまでエントリーレベルの仕事として多くの若者が経験を積んできた職種が減少しているという。例えば、若手のソフトウェア開発者が従事していた単純なコーディングやデバッグ作業、または法律や小売業での基礎的な業務がAIによって代替されている。特にウォール街の企業では、新入社員の採用を大幅に削減する動きが見られるとも報じられている。
さらに、近年、大卒者の失業率は他の層よりも早く上昇しており、AIがこの問題の原因となっている可能性があるとラマン氏は述べる。しかし、AIがすべての問題を引き起こしている決定的な証拠はまだない。
一方で、AIは一部の若手社員にとっては、より高度な業務に取り組むための機会を提供しているとも言える。AIの活用により、従来のエントリーレベルの仕事が減少する一方で、より専門的な業務に携わることができるようになり、キャリアの早い段階で新しいスキルを獲得するチャンスが生まれている。
AIによる変化は広範囲に波及する可能性
ラマン氏は、特定の業界での変化が他の分野にも波及する可能性が高いと予測している。特に事務職が最も影響を受ける分野であり、AIが導入されることで、これまで人間が行っていた仕事が機械に置き換わると考えられる。彼は、AIがすでにテクノロジー分野で広く採用されており、今後は金融、旅行、食品、専門サービスといった分野でも同様の動きが進むと予測している。
ラマン氏は、大学がAIをカリキュラムに組み込むことや、企業が下級職により高度な仕事を与えるようにすることを提案している。これにより、AIによる職業の変化に対応し、労働市場における適応力を高めることができると考えている。
AIの進展と企業の適応
AIの導入が進む中で、企業は新しい状況に適応しつつある。Jasper.aiのCEO、ティモシー・ヤング氏は、AIの「知能のコモディティ化」が進んでいると述べ、企業は最も賢い人材を雇うだけでなく、管理能力を持つ人材の育成にも力を入れるべきだと指摘している。また、IndeedのCEOクリス・ハイアムズ氏は、AIがすべての仕事を代替することはないとしつつも、多くの職業においてAIがそのスキルの50%以上をうまくこなせることを示す調査結果を発表している。
一方で、言語学習アプリのDuolingoやフィンテックアプリのKlarnaは、人間の労働者をAIに置き換えるという方針を撤回した。これにより、AIの導入に対する慎重な姿勢が示されている。IBMの調査によれば、AIイニシアチブのうち3件に1件が、約束したROIを達成していないことがわかっている。また、全米経済研究所(NBER)の調査では、AI技術が収入や労働時間に与える影響はほとんどないことが判明しており、AIの影響を過大評価することのリスクが浮き彫りになった。
このように、AIの導入は進んでいるものの、依然として解決すべき課題が多いことが示されている。企業は、AIの効果を最大限に引き出す方法を模索し、労働市場の変化に対応するための柔軟なアプローチが求められている。(出典:Fortune, LinkedIn)