
Harry’s、ブランドリフレッシュと新キャンペーンでアイデンティティを再定義
DTC(Direct-to-Consumer)モデルの先駆者として知られるHarry’sは、ブランドの再構築を目的に、製品からデジタル、ソーシャルメディア、店舗展開に至るまで、広範なブランドリフレッシュを実施した。同時に、ブランドの核心的価値を再確認する新キャンペーン「Man, That Feels Good」を開始し、従来の製品中心のマーケティングからの脱却を図っている。
このキャンペーンには、3本の15秒広告、1本の30秒広告、1本の70秒の長編スポットが含まれており、犯罪映画の典型的な要素を皮肉る構成を通じて、「男性用グルーミング製品が人格を変えるものではない」という、誠実なブランドメッセージを伝えている。
リブランディングの背景と狙い
Harry’sは2013年にDTCブランドとして創業し、現在ではシェービングのみならず、ボディケア、ヘアケア、スキンケアといった製品ラインへと拡大している。ブランド副社長のジゼル・バラガット氏は、「Harry’sはもはや単なるカミソリブランドではなく、DTCの枠を超えて成長を遂げた」と述べている。
新キャンペーン「Man, That Feels Good」の核心は、「Harry’sは男性をハンサムなバッドボーイに変身させる製品ではない」という率直な姿勢にある。ズールー・アルファ・キロ・ニューヨークのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるティム・ゴードン氏は、「私たちは誇張された広告表現や思春期的なユーモアに満ちたグルーミングカテゴリーの中で、より正直で親しみやすいスタンスを取りたいと考えた」と説明している。
キャンペーンの内容と展開メディア
キャンペーン映像は、シンプルなバスルームのシーンから始まり、徐々に複雑な犯罪映画のような設定へと展開していく。15秒スポットでは、美術品盗難の逃走劇や、偽造書類と違法整形による身元変更といった、映画的だが誇張されたシナリオが登場する。70秒の長編CMでは、失恋した男性が武器密売を目撃し、手下から逃走し、嵐を耐え、最終的に狼と心を通わせるという、風刺の効いたミニ叙事詩が描かれている。
「トゥルー・ロマンス」や「ロニン」といった作品に影響を受けたこの映像表現は、リアルで映画的なトーンを意図的に採用し、カテゴリーにおける従来の広告アプローチとの差別化を図っている。
このキャンペーンは、Hulu、Netflix、Peacock、ESPN、Disney+、NBC Sports、Prime Videoなどのストリーミングプラットフォームを通じて配信されているほか、ニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルスの都市圏での屋外デジタル広告、YouTube、Meta、TikTokにおける有料ソーシャル広告も展開されている。さらに今後数ヶ月間、インフルエンサーとの協業やブランドパートナーシップ、ソーシャルメディアによる拡張的な展開も予定されている。
ビジュアルアイデンティティの刷新
Harry’sはこのキャンペーンに合わせて、ロゴ、パッケージ、カラーパレット、商品写真といったビジュアルアイデンティティも刷新しており、これらは製品パッケージからデジタル、ソーシャル、実店舗に至るまで一貫して適用される予定である。今回のブランドリニューアルは、DTCブランドが他の小売チャネルへ拡大する際によく見られる戦略の一部と位置づけられている。
Harry’sは、女性向けグルーミングブランド「Flamingo」やデオドラントブランド「Lume」「Mando」などを含むHarry’s Inc.ファミリーの一員である。2021年の資金調達ラウンドでは、同社は17億ドルの評価を受けており、2023年には秘密裏にIPO申請を行ったとの報道もある。
なお、Harry’sはかつてシックの親会社であるエッジウェルとの合併を計画していたが、2020年に米連邦取引委員会が独占禁止法の観点からこの取引を阻止したことで、その計画は中止された。
新たなブランドメッセージとビジュアルスタイルを通じて、Harry’sはグルーミング業界における自身の立ち位置を再定義しようとしている。誠実でユーモラスな表現を通じて、従来の誇張された広告から一線を画し、製品の本質と価値を正面から伝えるこのキャンペーンは、今後のブランド展開における重要な一手となるだろう。(出典:Harry’s, Marketing Dive他)