
Hoka、StravaのランニングデータをデジタルOOHに活用 ニューヨーク5区を巻き込む「Run Your City」
ランニングシューズブランドのHokaが、ランニングアプリStravaとのグローバルパートナーシップを生かし、ニューヨークのランニングコミュニティを巻き込む新たなキャンペーン「Run Your City」を展開している。特徴は、ランナーが実際に走った距離やペースなどのデータをキャンペーンのクリエイティブに反映させる点にある。
1か月間にわたるチャレンジでは、ニューヨークの5つの行政区、マンハッタン、クイーンズ、ブルックリン、ブロンクス、スタテンアイランドのランナーが、それぞれの区を代表して走行距離を競う。9月を通じて集計された記録は、タイムズスクエア、トライベッカ、ソーホー、ウィリアムズバーグなどに設置されたデジタルOOHスクリーンで毎週更新される。
スクリーンでは、ニュースや株価情報などを表示するティッカーを思わせるデザインを用い、各区の累計走行距離やペース、そのほかのランニング統計をリアルタイムに近い形で伝える。つまり、広告を見る人が目にするのはブランドが一方的に制作したメッセージではなく、ニューヨークのランナーたち自身が生み出した活動の成果である。
今回の取り組みは、Hokaが2025年7月に始動させたブランドプラットフォーム「Together We Fly Higher」の延長線上にも位置づけられる。同プラットフォームでは、ランナーを支えるコーチなど、ランニングコミュニティを構成するさまざまな人々に焦点を当ててきた。「Run Your City」ではさらに一歩進め、ランナーの行動そのものを広告表現に取り込み、走ることへの参加とコミュニティへの関与を促している。

走行データを広告に変える、参加型のコミュニティ戦略
キャンペーンを広げる役割を担うのが、デジタルOOHだけではない。TikTokやMetaでの有料ソーシャル広告に加え、クリエイターを起点としたコンテンツも展開する。
クリエイタープログラムを主導するのは、The Brandtech Group傘下のクリエイターマーケティング企業Collectivelyである。5つの区を代表する6人のクリエイターが参加し、ランナーを励ましながら、自身のランニングの進捗も発信していく。ブランドが競争を設定するだけでなく、クリエイター自身がチャレンジに参加することで、オンライン上でもキャンペーンへの参加感を高める仕組みである。
キャンペーンのフィナーレは、10月3日にMcCarren Parkhouseで開催されるブロックパーティーとなる。ランナーやクリエイター、地域コミュニティが集まり、1か月間にわたる競争をリアルな場で祝う予定だ。
イベントの模様は10月のソーシャルメディアキャンペーンでも取り上げられる。また、ファッション・メディアブランドのHighsnobietyとのパートナーシップによって、チャレンジ全体を振り返る記事も制作される。
「Run Your City」のコンセプトを考案し、クリエイティブとメディアプランニングを主導しているのは、Brandtech Group傘下の広告代理店Jellyfishである。OOH、ソーシャル、クリエイター、イベント、パブリッシャーとの連携を組み合わせることで、単発の広告ではなく、1か月間にわたってランニングコミュニティの活動そのものをコンテンツ化している。
このアプローチの背景には、Hokaが長年マーケティングの中心に据えてきたランニングコミュニティへの支援がある。ランナーを鼓舞し、参加を促すポジティブなメッセージは、競合ブランドとの違いを打ち出すうえでも意味を持つ。
競合のNikeは2026年4月、「ランナー歓迎。ウォーカーは許容」という趣旨の屋外広告を掲出したものの、批判を受けて短期間で撤去した。Nikeは売上の低迷とマーケティング面での課題を抱えており、その間隙をHoka、On、Brooks Runningなどの競合ブランドが狙っている。Brooks Runningも最近、俳優・歌手のシンシア・エリヴォとパートナーシップを組み、ブランドへの支持を広げようとしている。
「Clifton UTL」でZ世代にも接近、好調なHokaの成長を支える
Hokaは「Run Your City」と並行して、若い世代へのブランド接点を広げる取り組みも進めている。
同ブランドは2026年9月、人気TikTokクリエイターでオンラインヴィンテージショップ「Rogue」の創設者でもあるエマ・ローグとのパートナーシップを発表した。新スニーカー「Clifton UTL」をフィーチャーしたグローバルキャンペーンの一環であり、ローグはニューヨーク・ファッション・ウィークのランウェイショーやアフターパーティーに同モデルを履いて登場する。
ヴィンテージや中古品を選ぶ傾向が強まっている若年層、とりわけZ世代との接点を広げることが、このコラボレーションの狙いの一つである。ランニングだけを軸にするのではなく、ファッションやクリエイター文化を入り口として新しい消費者層にブランドを浸透させようとしている。
Hokaを傘下に置き、UggやTevaも展開するDeckers Brandsの業績も、ブランドの勢いを示している。同社は2026年6月30日に終了した2027年度第1四半期において、四半期売上高が初めて10億ドルを突破した。Hokaの純売上高も前年同期比で約8%増加している。
Deckers Brandsは、Hokaが新たな小売パートナーシップの恩恵を受けることで、2027年度下半期も一桁台後半の成長を維持すると見込んでいる。一方で、一部のアナリストからは、Hokaの需要が今後鈍化する可能性を指摘する声も出ている。
その意味でも、「Run Your City」は単なるランニングイベントではない。実際のランナーの行動データを広告表現に変換し、地域コミュニティを参加者として巻き込み、クリエイターやファッションとの接点まで広げることで、Hokaがランニングシューズの機能訴求だけに依存しないブランドづくりを進めていることを示すキャンペーンである。
ランナーが走った距離そのものを広告のコンテンツにすることで、ブランドが「ランニングを語る」のではなく、「ランニングしている人々の活動を可視化する」構造をつくっている点が特徴的である。コミュニティの実際の行動をメディアに変えることで、Hokaはランナーとの関係を広告の外側まで広げようとしている。(出典:MARKETING DIVE、画像:HOKA)
















