
サッポロ、香港に漫画で描く「立ち飲み」空間:150年の醸造史を体験に変える
サッポロは、香港・コーズウェイベイの商業施設ハイサン・プレイスで、日本の「立ち飲み」文化を漫画の世界観と組み合わせたポップアップイベントを展開している。香港では初めてとなる漫画をモチーフにした日本式の立ち飲み体験であり、新鮮な生ビールに加え、日本の飲食文化や限定コレクターズアイテムを組み合わせた企画である。BBDO香港が企画したこのアクティベーションは、サッポロの創業150周年を記念したものだ。2026年9月25日夕方から10月8日まで一般公開され、長い歴史を持つブランドの物語を、香港の都市生活者が実際に触れ、飲み、楽しめる体験へと置き換えている。
中川清兵衛の物語を漫画化し、150年の歴史を「体験」に変える
今回の企画の背景にあるのは、1876年に北海道で始まったサッポロの醸造の歴史である。西洋の本格的な醸造技術を日本に導入した創業者・中川清兵衛の歩みをオリジナル漫画のストーリーとして再構成している。単に創業から150年という数字を伝えるのではなく、その歴史そのものを空間体験に落とし込んだことが今回の特徴である。来場者が漫画を読み進めながらブランドのルーツを知ることで、サッポロが受け継いできた開拓者精神を、より身近な形で感じられる仕掛けとなっている。

会場の中心には、日本の立ち飲みバーをイメージした円形の木造パビリオンを設置。紙提灯や頭上に配置された漫画パネルによって、日本の街角にある立ち飲み店を思わせる雰囲気をつくり出している。来場者は、会場内のイラスト付きパネルを読みながら、中川清兵衛の物語を追体験できる。さらに、コレクターズアイテムとしてデザインされた漫画柄の紙コップにもQRコードを設け、デジタルコンテンツとリアルな飲食体験をつなげている。そこで提供されるのが、サッポロの生ビールである。
カールスバーグ・ブルワリーで香港・台湾を担当するマーケティングディレクターのスティーブン・ウォンは、150周年という節目について、単に過去を振り返り、ブランドの歴史を説明するだけでは十分ではないと語る。サッポロは1876年、中川清兵衛が本格的な醸造技術を日本に持ち込んだことから始まった。その背景にある挑戦と献身の精神は、現在提供される一杯のビールにも受け継がれているという考え方だ。
そこで今回の企画では、コーズウェイベイの街中に香港初の漫画風日本バーをつくり、150周年記念の限定缶に描かれた物語を現実の空間へと展開した。ブランドの歴史を展示するのではなく、漫画、空間、ビール、デジタルコンテンツを組み合わせることで、都市の中で楽しめる没入型のエンターテインメントへと変換している。
漫画からファッション、SNSまで広がる150周年のブランド体験
今回のアクティベーションは、会場での飲食体験だけにとどまらない。サッポロは150周年を記念した限定ライフスタイルグッズのコレクションも展開している。ラインアップには、ブランドや漫画のストーリーから着想を得たグラフィックアパレルをはじめ、サッポロ・カタナ・オープナー、ウォッシュドデニム素材のトートバッグなどを用意。ビールブランドの記念グッズという枠を超え、漫画の世界観や日本のカルチャーを日常生活に持ち帰れるアイテムとして構成している。

また、イベントの認知拡大と参加促進に向けて、香港のKOL(キーオピニオンリーダー)との連携も実施。現地でのプロモーション活動に加え、文化、ライフスタイル、ファッション、飲食といった複数のコミュニティを横断するソーシャルコンテンツを展開している。サッポロにとって創業150周年は、過去の実績を振り返るだけの記念年ではない。1876年に始まった醸造の物語を漫画という現代的な表現に置き換え、日本の立ち飲み文化と組み合わせ、香港の都市空間で体験できるコンテンツへと再構成した。
歴史の長いブランドほど、伝統そのものを説明するだけでは現在の生活者との接点をつくりにくい。今回のサッポロの取り組みは、ブランドの過去を現代の文化やエンターテインメントに翻訳することで、150年という時間を新しい体験価値として提示する試みといえる。(出典・画像:Sapporo, Branding in Asia)
















