コカ・コーラ、FIFAワールドカップで“感情”を描く―キャンペーン完結編「No Better Feeling」

ワールドカップを「感情の旅」として描くブランド戦略

FIFAワールドカップの開幕を目前に控え、多くのグローバルブランドが関連キャンペーンを展開している。その中でも長年にわたり大会スポンサーを務めてきたコカ・コーラは、早い段階からマーケティング活動を開始した。同社は2026年1月に「Bubbling Up」、4月に「Uncanned Emotions」を公開し、ワールドカップをめぐる期待感や熱狂、サッカーファン特有の文化や儀式を描いてきた。そして今回公開された「No Better Feeling」は、そのシリーズを締めくくる最終章として位置付けられている。3本で構成される「Feel It All」キャンペーン全体を通じて描かれているのは、ワールドカップが単なる試合の連続ではなく、数か月にわたって続く感情の旅であるという考え方である。期待、不安、興奮、歓喜といった感情の起伏こそが大会の本質であり、コカ・コーラはその体験そのものに寄り添うブランドとしての立場を打ち出している。

VAR判定の緊張感を描いた「No Better Feeling」

最新作「No Better Feeling」は約2分間の映像作品であり、サッカー観戦における極限の感情体験に焦点を当てている。物語の中心となるのは、試合を左右する重要な判定の瞬間だ。ファンたちは相手チームのゴールによって敗北を覚悟し、落胆や悔しさをあらわにする。しかし直後に審判がVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)による確認を指示し、会場は緊張感に包まれる。判定結果を待つわずかな時間は、まるで時計が止まったかのように描かれる。その間、観客は冷蔵庫からコカ・コーラを取り出す余裕すら持つ。そして最終的にゴール取り消しの判定が下されると、ファンたちは一斉に歓喜を爆発させる。映像では、その祝福の瞬間がスローモーションで表現され、感情の解放が印象的に演出されている。この作品は、サッカー観戦における数秒間の感情の揺れをドラマチックに描き出し、ブランドとスポーツ体験を結び付ける内容となっている。

スポーツマーケティングにおけるコカ・コーラの強み

今回のキャンペーンは、クリエイティブを担当するオグルヴィを中心に、WPP Open Xが企画・制作を主導した。メディア運用や制作面ではWPPグループ各社が支援している。クリエイティブチームは、ワールドカップの魅力を「人々が理性を忘れるほど感情移入するイベント」である点に見出している。試合の展開によって揺れ動く感情の波の中で、コカ・コーラは安堵や喜びを共有する存在として描かれている。また、コカ・コーラは2026年、複数市場におけるメディア、データ、テクノロジー領域のパートナー選定を進めているが、グローバルのクリエイティブおよびPR業務については引き続きWPP Open Xが担当する方針を示している。業績面では、同社の2026年第1四半期売上高は前年同期比12%増の125億ドルとなっており、ブランド投資と事業成長の両立を進めている。今回の「Feel It All」キャンペーンは、商品そのものを訴求するのではなく、スポーツが生み出す感情体験にブランドを重ね合わせる手法を採用している。ワールドカップという世界最大級のスポーツイベントにおいて、コカ・コーラは単なるスポンサーではなく、ファンの感情に寄り添う存在としてのポジションを改めて強化しているのである。(出典:MARKETING DIVE、画像:コカ・コーラ)

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