IABが示した「責任あるAI広告」の設計図—消費者の不信と業界の楽観の溝を埋める透明性フレームワーク

一律開示を避ける、リスクベースという判断

インタラクティブ広告協会(IAB)は、広告分野では初となるAI透明性・開示フレームワークを発表した。この枠組みの特徴は、あらゆるAI活用に対して一律の表示を求めるのではなく、消費者の誤解を招くリスクがあるケースに限定して開示を行うという点にある。
新フレームワークでは、AIが真正性、身元、表現に実質的な影響を与え、消費者の認識を誤らせる可能性がある場合のみ、表示やラベル付けを求める方針が示された。透明性の確保と、広告制作・運用の効率性とのバランスを取るための、リスクベースのアプローチである。

開示が求められるAI、免除されるAI

IABは、具体的な「開示トリガー」も明確に定義している。対象となるのは、プロンプトによって生成された画像、動画、音声、ならびに合成人間やデジタルツインといった表現である。これらについては、消費者に対してAI使用を明示するラベルの提供が求められる。
一方で、日常的な制作補助タスク、バックグラウンドで機能するAIツール、あるいは明確に様式化されたクリエイティブ表現については、開示要件の対象外とされた。すべてを開示するのではなく、「誤解を生む可能性があるかどうか」を基準に線引きを行う点が、この枠組みの中核である。

業界の期待とZ世代の現実的な不信感

この発表は、IABとソナタ・インサイトが共同で実施した最新調査と同時期に行われた。同調査は、広告業界の認識と消費者意識の間に大きな隔たりが存在することを浮き彫りにしている。
広告担当者の82%が「若年層はAI広告に好意的だ」と考えているのに対し、実際にAI広告を肯定的に受け止めているZ世代およびミレニアル世代は45%にとどまった。特にZ世代は、ミレニアル世代と比べてAI広告に否定的な感情を抱く可能性がほぼ2倍高く、AIを活用するブランドを「不誠実」「操作的」「非倫理的」と捉える傾向が強いことが示されている。

透明性はリスクではなく、信頼回復の手段

広告主側では、すでに60%以上の経営幹部が広告制作にAIを活用しており、AI導入は不可逆的な流れとなっている。しかし、IABの調査が示すのは、経営層がAIを「革新」と結びつける一方で、消費者、とりわけ若年層は「本物らしさ」や誠実さをより重視しているという現実である。
注目すべきは、透明性そのものに対する消費者の反応だ。Z世代とミレニアル世代の73%は、AI利用について明確な開示があれば購入意欲が高まる、もしくは少なくともネガティブな影響はないと回答している。
IABのフレームワークは、合成人間やディープフェイクといった重大なリスク領域に開示義務を集中させることで、不要な表示による情報過多を避けつつ、ブランドが信頼を構築する道筋を示そうとしている。AI時代の広告において、透明性は負担ではなく、信頼を取り戻すための戦略資産になり得るというメッセージである。(出典:WARC、画像:IAB)

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