
Best Global Brands 2025:AI主導の市場変動でブランド評価が大きく再編
インターブランドの最新グローバル・ブランド・ランキング(2025年版)によれば、AIの急伸と市場環境のダイナミックな変化により、企業の財務成果や顧客認識が再構築され、ブランド評価が大きく入れ替わった年である。2000年の発表開始以降で最多の新規参入と離脱が同時に生じた。
世界のブランド価値総額は前年比4.4%増の3兆6,000億ドルに達した。一方で個別ブランドでは変動幅が大きい。評価は、財務実績、マーケット・フットプリント、ブランドが購買意思決定に与える寄与度、ロイヤルティを駆動する力など、複数要素の合算で算出されるとされる。
AIがもたらす地殻変動
AI関連の潮流を巧みに取り込んだブランドが評価を伸ばしている。とりわけNvidiaは、ブランド価値が前年比+116%の432億ドルとなり、同ランキング史上最大の伸びを記録した。順位も36位から15位へと急浮上し、単独事業として過去最大のランクアップとなった。もっとも、長期のブランド投資を怠れば、破壊的な競合に主導権を奪われる可能性があるという指摘もある。
デジタル・サービスの躍進
ネットフリックス、ユーチューブ、ウーバー、インスタグラムといったデジタル・ファーストのサービスが引き続き加速している。ネットフリックスはライブエンタメやゲームへの本格展開が寄与し、ブランド価値は前年比+42%。インスタグラムは+27%で初のトップ10入りを果たした。これらはデジタルサービスとエンターテインメント領域の強さを裏づける動きである。
ブッキング・ドットコム(32位)、ユニクロ(47位)、モンスター(70位)、ショッピファイなどが新たにランクインした。いずれも「特定の課題を独自性高く解決する」「一つの領域を卓越して磨き上げる」といった強みが評価されたとされる。
逆風に直面するカテゴリー
長期的な成長を牽引してきた高級ブランドには減速が見られる。ルイ・ヴィトンは前年比▲5%、シャネルは▲8%、グッチは▲35%となり、グッチはトップ50から外れた。
自動車分野も構造変化が進む。テスラは複合要因でパブリックイメージが低下し、ブランド価値が前年比▲35%となった。
首位グループは前年(2024年)と同じく、アップル、マイクロソフト、アマゾンの順で維持された。ただしアップルのブランド価値は4,709億ドルで前年比▲4%となり、長年の王座は相対的に脆弱さを増している。
戦略的示唆
今年のランキングが示すのは、①AIやデジタル化を梃子にした新領域への参入、②文化的関連性の継続的な構築、③長期のブランド投資という三点の重要性である。レガシーだけに依存する姿勢は伸び悩みにつながりやすく、逆に破壊的トレンドを自社の価値提案に統合し、収益源を多角化できるブランドが勝ち筋を描いていると言える。(出典・画像:Interbrand, DigitalMarketingDive)