
サックス、アマゾンに出店──戦略的提携か、苦境の打開策か
サックスのアマゾン出店──背景と狙い
サックス・フィフス・アベニューは、アマゾンの「ラグジュアリー・ストア」に出店し、ドルチェ&ガッバーナやバルマンといった高級ブランドを取り扱い始めた。この動きは、サックスがニーマン・マーカスの買収による財務負担を軽減する一方で、アマゾンが高級市場での存在感を強化する狙いと連動している。
アマゾン上でのサックスのストアは、従来のアマゾンの出品ページとは異なり、レビューや「おすすめ」機能などを省いたシンプルな構成となっており、一定のブランドイメージ保持を図っている。ただし、こうした出店によりサックスのブランド価値や高級感が損なわれる可能性を指摘する声も多い。
サックスの財務状況と店舗戦略
サックスは2023年末、ニーマン・マーカスの買収資金としてジャンク債22億ドルを発行し、合計27億ドルの調達を図ったが、現在これらの債券は大幅に価値を落としており、利払いの期限が迫っている。同社は7月から分割返済を開始する計画であるが、サンフランシスコ旗艦店の閉鎖を含め、北米で複数の店舗を整理する見通しだ。CEOマーク・メトリックは、同社に約3億5千万〜4億ドルの流動性があると強調しつつも、今後さらなるコスト削減が必要であると述べ、5億ドルの削減計画を明らかにした。
業界専門家は、今回のアマゾン出店を「必要な収益確保策」と捉える一方で、長期的にはサックスにとってブランドの希薄化という代償があるとの見方もある。GlobalDataのニール・ソーンダースは、「このパートナーシップにおいてアマゾンの利益が上回る構図であり、サックス側にとって不利な結果となる可能性がある」と分析する。
現時点でアマゾンへの出店に同意しているのは限られた高級ブランドにとどまっており、ルイ・ヴィトン、エルメス、シャネルなどの一流ブランドは、依然としてアマゾンを販売チャネルとして採用していない。販売の「場」そのものがラグジュアリーブランドの戦略に直結している以上、ブランド選定の姿勢が今後の評価に大きく影響するだろう。(出典;Forbes, Amazon, Saks Fifth Avenue)