ナイキの新広告「Winning isn’t Comfortable」に見る勝利の葛藤
(画像はYouTubeより)ナイキは、新広告「Winning isn’t Comfortable」を発表し、マラソンの過酷さと勝利の苦悩をユーモラスに描写している。最新作「Stairs」では、マラソン後の体験や、限界まで追い込んだ後の苦しみをテーマにしている。
キャンペーンの内容
Wieden+Kenneyが手掛けたこの30秒の広告は、「Winning Isn’t Comfortable」キャンペーンの一環として制作され、マラソンの後、階段を下りたり、通りを歩いたりする際に、体の痛みと戦う人々の様子をユーモラスに描いている。彼らは明らかにマラソンの疲労に苦しみ、ぎこちなく足を引きずっている。
このキャンペーンは、2024年9月から12月まで、ベルリン、シカゴ、ニューヨークなどの主要都市で実施されるメジャーマラソン大会に合わせて展開され、世界中のランナーとのつながりを目指している。限界に挑むランナーたちの精神を表現するこの広告は、タイムリーであり、特にマラソンを経験したランナーの共感を得る内容となっている。
体現する「痛み」と共感
この広告では、スマートフォンで撮影されたようなドキュメンタリー風の映像で、マラソン後の痛みに苦しむ人々が描かれている。手すりにうずくまり、体をかばうような姿勢で階段を下りる彼らの姿は、ベテランのランナーにも、カジュアルなジョギング愛好家にも共感を呼ぶ。
背景では、スコットランドのハードロックバンド、ナザレスの1976年の楽曲「Love Hurts」が流れ、痛みとユーモアが融合したテーマを強調している。また、ラジオのアナウンサーがこの曲を「昨日マラソンを走ったすべての人」に捧げる場面があり、ナイキがあらゆるランナーを祝福するメッセージを伝えている。
「勝利は必ずしも快適ではない」
ナイキは、この広告で「勝利は必ずしも勝利のように感じられるものではない」というメッセージを伝えている。実際に走るシーンは描かれず、レース後の不快感という普遍的な体験を通じて、勝利の代償を描写している。キャッチフレーズ「Winning Isn’t Comfortable」は、成功には苦痛が伴うことが多いが、それは価値のある代償であるという考えを強調している。
ナイキのこのアプローチは、一般的な向上心あふれるキャンペーンとは異なり、より現実的で地に足のついた「勝利」の姿を描いている。2024年9月に発表された「Morning」、「Sunshine」、「Joy」など、これまでの「Winning Isn’t Comfortable」キャンペーンの一環として、ランナーが直面する肉体的・精神的な挑戦を称えるメッセージが共通している。この広告キャンペーンは、ナイキがランナーの実体験に焦点を当て、リアルな勝利の苦しみを視聴者に伝えながら、ブランドの信念を強調している。(出典:Wieden+Kenney, NYTimes, Nike)