
フォートナム・アンド・メイソンが挑む「聴こえるチョコレート」ー味覚と音楽を融合させた多感覚ブランド体験
チョコレートにサウンドトラックを与えるという発想
もしチョコレートバーが音楽を奏でるとしたら──。英国の老舗高級食料品ブランド、フォートナム・アンド・メイソンは、この発想を実際の製品として形にした。新たに発表されたチョコレートバーシリーズは、それぞれに固有の音楽を伴う設計となっており、食べる行為そのものを聴覚まで含めた体験へと拡張している。
本プロジェクトは、ブランディングエージェンシーOtherwayとの協業によって開発された「Bars of Chocolate」コレクションである。名称には「バー(板チョコ)」と「音楽の小節」という二重の意味が込められており、味覚と旋律の出会いをコンセプトに掲げている。

16種のフレーバーと16曲のオリジナル楽曲
コレクションは全16種類のチョコレートバーで構成され、それぞれに対応するオリジナル楽曲が用意されている。各バーには、その味わいを音楽で表現するために作曲された楽譜がペアリングされており、パッケージデザイン自体が音楽体験への入口となっている点が特徴だ。
音楽制作は、音楽制作会社Mcassoと作曲家のネイサン・ブリットン、ジャスミン・ミーデンが担当した。彼らは、消費者が最初の一口を口にしてから食べ終えるまでのプロセスを、一つの旅路として捉え、それを反映するピアノ曲を制作している。味覚の変化と音楽の展開が呼応する構成により、「食べる時間」が一連の物語として設計されている。
食べ進めることで完成するパッケージ体験
パッケージのビジュアルも、この多感覚体験を支える重要な要素である。各パッケージの表面には、アーティストのヴィクトリア・セミキナによるイラストレーションが施され、内部に隠された楽譜の存在を示唆している。
チョコレートを食べ進めるにつれてパッケージ内の楽譜が徐々に現れ、最後の一片を食べ終えたときに初めて完全な楽譜が完成する仕組みだ。消費者は、演奏する、聴く、あるいは想像するなど、能動的な関わり方を通じて音楽を体験することになる。16種類のバーには、それぞれ異なる楽曲が割り当てられており、全体として一つの音楽コレクションを形成している。
ブランドらしさを拡張する感覚的アプローチ
フォートナム・アンド・メイソンの製品・包装部門責任者は、本プロジェクトについて「商品ラインを新鮮で予想外の方法で活性化し、フォートナムを象徴する風味、創造性、発見の喜びを称えること」を目的としたと説明する。その結果、他にはない個性を備えたコレクションが生まれたという。
このデザインは、パッケージングでは比較的用いられることの少ない「聴覚」という感覚を巧みに取り込み、顧客を驚かせ、魅了する効果を生んだ。実際、従来デザインと比較して売上面でも明確な変化が見られており、ブランド体験が購買行動に与える影響を裏付ける結果となっている。
味覚だけでなく、視覚と聴覚を横断する今回の取り組みは、フォートナム・アンド・メイソンが培ってきた伝統を現代的に再解釈し、ブランド体験の可能性を一段引き上げる試みであると言える。(出典:CREATIBE BLOCQ、画像:フォートナム・アンド・メイソン)
















