
ディワリは新しい旧正月となり得るか
インドと中国の寓話から現在へ
2001年頃、中国とインドの経済成長はしばしば「ウサギとカメ」の寓話に例えられていた。中国は、強力な指導体制の下で急成長するウサギとして語られ、インドは社会主義的な政策と多党制による停滞で歩みの遅いカメと見なされていた。20年余りを経た現在、この寓話は依然として示唆的である。急走してきたウサギが疲弊する一方、カメは着実にゴールへ近づいているように見える。
インドの経済成長とブランドの注目
インドのGDPは英国を上回り、中産階級の拡大とともに世界からの注目を集めている。中国やロシアでの不確実性、中東や欧州の政治的・経済的混乱を背景に、インドは明るい市場と認識されている。特にヒンドゥー教の新年であるディワリ(2025年は11月1日)が迫ると、グローバルブランドは一斉に消費者獲得に動き出す。
ジミー・チュウやクリスチャン・ルブタンは特別コレクションを発表し、ラーフル・ミシュラやアニタ・ドンレといった地元デザイナーとの協業も進んでいる。マテルはディワリ仕様のバービー人形を投入し、文化的象徴を巧みに取り込んでいる。
ラグジュアリー市場への波及
ディワリは贈答や結婚式シーズンの幕開けであり、時計や宝飾品の需要が高まる。ロンドンではインド人ディアスポラ向けの華やかなディワリ・ボールが開催され、英国ファッション協会も南アジア系ブランドを称えるイベントを実施している。
ニューヨークではプラバル・グルンやプリヤンカー・チョープラーら著名人が祝祭に関わり、ディワリはグローバルな存在感を増している。シャネルのリーナ・ナイルやグーグルのサンダー・ピチャイといったインド出身のリーダーが世界的に活躍する姿も、この流れを後押ししている。
通年戦略としてのディワリ
商業的規模では旧正月に及ばないものの、インド市場で長期的に成功を収めるにはディワリを戦略に組み込む価値がある。重要なのは、この祭りを単発の販売機会とせず、ホーリーなど他の祭典とも連動させ、年間を通じた関わりを築くことである。インドの市場は伝統工芸や地元ブランドとのつながりを重んじる歴史を持ち、ラグジュアリーは製品と同じくサービスや体験に根ざしている。インドのアーティストや職人との本格的な協業こそが、真の価値を示す道である。
最終的に、インドのラグジュアリー市場は「ゆっくりとした贅沢」を重んじる土壌を持ち、国際ブランドが成功するためにはその文化を尊重し、共に育む姿勢が不可欠である。(出典:LUXURY DAILY、画像:iStock)