
スターバックスCEO、業績回復の鍵としてマーケティングを強調─再建の兆しと次なる一手
スターバックスの米国市場における既存店売上は、2025年度第3四半期(6月29日締め)において前年同期比2%の減少を記録した。平均客単価が2%上昇したことにより部分的にその減少は相殺されたが、既存店の売上が6四半期連続で下落する中、経営陣はマーケティングとオペレーションの強化によって立て直しが進展していると判断している。
ブライアン・ニコルCEOは決算発表において、経営の再建を後押しする要因のひとつとしてマーケティング施策を挙げ、「事業再構築は予定よりも順調に進んでいる」と述べた。また、「私たちは、優れたマーケティングと強固なオペレーションという2つの重要なアセットを手に入れた」と強調している。
ブランド価値の回復と若年層の支持
同社の分析によれば、ブランドに対する顧客の評価は、Z世代およびミレニアル世代といった主要な若年層顧客の間で上昇しており、これは過去2年間で最も高い水準に近づいている。ニコルCEOは、この動きこそがマーケティング戦略の効果を物語っていると説明する。
さらに、ロイヤルティプログラム「スターバックス リワード」では、割引を利用せずに商品を購入する会員が増加傾向にあり、会員以外の顧客においても、パンデミック後初めて前年比で取引件数が増加した。90日間のアクティブ会員数は3,400万人を超え、スターバックスは2026年初頭にかけて、ロイヤルティやエンゲージメントの強化、ブランド愛の醸成を目的とした「大規模な」機能追加を予定している。
マーケティング投資とブランドストーリーの再構築
スターバックスは2025年に入り、ブランド再構築の一環としてマーケティングへの投資を強化している。1月には、バンド「ザ・ティン・ティン」の楽曲「That’s Not My Name」に合わせ、バリスタがカップに顧客の名前やメッセージを書く様子にフォーカスした広告を展開。スーパーボウルのプレゲームショーでもこのスポットを放映し、ブランドのストーリーとアイデンティティの再確認を図った。
ニコルCEOは、この広告キャンペーンが消費者の共感を得ているとし、「ブランドの核心的な価値に立ち返ることができた」と評価している。
同キャンペーンは、スタッグウェル傘下のエージェンシー「アノマリー」との共同制作によるものであり、これはスターバックスがWPPとの関係を解消してから数ヶ月後に決定されたクリエイティブパートナーの刷新でもある。
戦略的リブランディングの進行中
ニコルCEOは、スターバックスが進めるブランド再構築戦略において、マーケティングが果たす役割は極めて大きいと考えている。業務効率化に加え、消費者との関係性を再強化するストーリーテリングとエクスペリエンス設計の両輪が、スターバックスブランドの再興に向けた原動力となっている。
同社は今後も、マーケティングとロイヤルティプログラムを核に、顧客との継続的なエンゲージメントを深めながら、成長軌道への回帰を目指す。スターバックスの再生の行方には、業界内外から引き続き注目が集まるであろう。(出典:Starbucks, Digital Marketing Dive他)