
カンヌライオンズ、AIを使用したキャンペーンでグランプリ取り消しと保護措置の導入
カンヌライオンズ2025で、広告代理店DM9が手掛けた「Efficient Way to Pay」がAI生成コンテンツを使用していたことが発覚し、同キャンペーンに対して受賞が取り消された。このキャンペーンは、クリエイティブ・データ・ライオンズ部門でグランプリを獲得していたが、事実に基づかない表現を用いたことが問題視された。
キャンペーン取り下げの背景
DM9は、他にも「プラスチック・ブラッド」や「金=死」といったキャンペーンでも受賞しており、これらのキャンペーンもAIを利用したものであることが分かり、すべての受賞が取り消された。カンヌライオンズは、これらの取り消しを行った後、ジェネレーティブAIを使った広告キャンペーンの透明性と倫理性を確保するために、複数の新たな対策を導入することを発表した。
新たな行動規範と保護措置
カンヌライオンズは、広告業界における信頼を損なうことなく、AI技術を適切に使用するための強化策を講じた。これには、以下の内容が含まれる:
- AI使用に関する情報開示の義務化:AIを使用したコンテンツは必ず開示し、その情報を提供しない場合、失格または辞退と見なされる。
- コンテンツ検出ツールの使用:AIを使って生成されたコンテンツや操作された事例フィルムを特定するための技術を導入。
- 倫理審査委員会の設置:AI、倫理、コンテンツの整合性に関する専門家を集めた審査委員会を新たに設置し、今後のコンペティションにおける公正性を保証する。
DM9の対応と業界への影響
DM9のキャンペーン取り下げに伴い、同社のチーフ・クリエイティブ・オフィサー兼共同社長であるイカロ・ドリア氏が辞職した。ドリア氏は、この問題に対する責任を取り、今後同様の問題が発生しないようAI倫理委員会を設立し、内部のセーフガードを強化することを表明した。
また、DDBネットワーク内のDM9が受賞した「Network of the Year」への影響については不明であり、他のキャンペーンでの受賞は影響を受けていないものの、今回の問題が業界に与える影響は計り知れない。
今後の対応
カンヌライオンズは、ジェネレーティブAIの利用が広告業界に与える影響を踏まえ、今後のコンペティションにおけるAI使用に関して更なる規制を強化する予定だ。AIを利用することで広告制作の効率化が進む一方で、倫理的な課題や透明性の確保が求められることになる。
今後、広告業界ではAIを活用したクリエイティブ活動が進むと予想されるが、その使用方法や情報の開示方法、倫理面での対策が厳しく問われることになるだろう。(出典/画像:Digital Marketing Dive他)