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リヴァプールFCのビジネス戦略:フィールド外の成功がフィールドの勝利を支える

(画像:Liverpool FC)リヴァプールFCは、プレミアリーグで20回目のタイトルを獲得した。スター選手であるモハメド・サラー、トレント・アレクサンダー=アーノルド、フィルジル・ファン・ダイクらが歓喜に沸く中、アメリカでは何千人ものファンが彼らの名前入りシャツを注文していた。アメリカ国内には約2,400万人のリヴァプール・ファンがおり、35州にわたる67のサポータークラブに属している。アメリカ市場は、リヴァプールのキットやグッズの最大の購入国となっており、昨シーズンだけで売上は14%増加した。テレビ視聴者も3,000万人を超え、前年比42%増を記録している。

リヴァプールFCの商業的成功は、フィールドでの成果と直結している。ナイキ、コカ・コーラ、エクスペディア、UPSなど、同クラブの主要パートナーの半数以上がアメリカ企業であることも、アメリカ市場重視の姿勢を物語っている。

経営危機から世界有数のブランドへ

2010年当時、リヴァプールは財政難に陥り、存続の危機に瀕していた。ボストン拠点のフェンウェイ・スポーツ・グループ(FSG)が約3億8000万ドルで買収し、現在では『Forbes』により57億ドル相当と評価されるまでに成長した。

リヴァプールFCチーフ・コマーシャル・オフィサーのベン・ラティは、ビジネス成長への本格的な取り組みが始まったのは10年ほど前だと語る。プレミアリーグの放映権をコントロールできない中で、リヴァプールはライセンス、パートナーシップ、小売事業など、独自に収益を高められる領域に集中してきた。

自社資産の最大活用

リヴァプールは、ファンとの接点の多くを自ら所有・運営している。ナイキによる公式キットを除けば、グッズのデザインから製造、流通に至るまでをクラブが掌握している。この体制により、需要に応じた柔軟な規模調整が可能となり、グローバルファンに向けた適切な製品展開と高水準のカスタマーサービスを維持している。

パートナーシップ戦略

リヴァプールFCは、Google Pixel、UPS、日本航空、Peloton、Husqvarnaなど、過去18か月間で10件以上の主要パートナーシップを締結した。特にアメリカ市場での存在感を強めるべく、米国企業との連携が目立っている。ラティは「パートナーには、単なるブランド露出ではなく、目的達成に資するインパクトのある協業を提供することが重要だ」と語る。

例えば、Google Pixelとの取り組みでは、すべてのメディア・スタッフにPixel端末を提供し、試合中の舞台裏コンテンツを撮影するプロジェクトを展開。偶然にもファン・ダイクがゴール直後にメディアスタッフのカメラを手に取り、貴重なセレブレーションシーンを撮影するなど、臨場感あふれる映像が自然発生した。

コンテンツ主導のファン戦略

リヴァプールは、YouTubeでプレミアリーグクラブ初のフォロワー1000万人超を達成しており、現在は1100万人を超えている。舞台裏映像、インタビュー、ファンとの交流、試合ハイライトといった多彩なコンテンツが人気を博している。また、パートナー向けブランデッドコンテンツもすべて自社制作している。

昨シーズン、リヴァプールのインスタグラムフォロワーは4670万人に達し、全ソーシャルチャネルで15億件以上のエンゲージメントを記録。これは、レアル・マドリードのラ・リーガ制覇時(4890万回)やカンザスシティ・チーフスのスーパーボウル優勝時(1270万回)と比較しても圧倒的な数字である。

興味深いのは、リヴァプールのコンテンツ視聴者の約70%が普段はサッカーを見ない層だという点だ。ラティは「コンテンツチームがサッカーオペレーションと緊密に連携し、重要な瞬間をとらえているからこそ、これほどの成果が生まれる」と述べる。

ビジネスが支えるフィールドでの勝利

プレミアリーグ優勝を控える中、ラティは「これまで築き上げたビジネス基盤を守り、さらなる収益向上に努めることが、クラブがピッチ上で勝ち続けるために不可欠だ」と強調している。(出典:Fast Company、Liverpool FC他)

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