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ハーバード大学のウェブサイト刷新に学ぶクライシス・コミュニケーション

2025年4月9日、ハーバード大学の公式ウェブサイトは一般的な大学紹介ページであり、世界トップクラスの教授陣と学生による知識探求、画期的な研究成果、歴史や伝統、学生支援などを紹介する内容で構成されていた。しかし、その日の夕方までに、同サイトは危機対応のため大きく様変わりした。

ハーバード大学は、DEI(多様性・公平性・包括性)プログラムや、トランプ政権下で反ユダヤ主義的活動と見なされた問題をめぐり、政府からの厳しい追及を受けていた。4月11日には、連邦政府がハーバードに対する22億ドルの研究助成金を凍結し、免税資格剥奪の脅しをかける事態に至った。同大学はこれに対抗し、資金凍結解除を求めて提訴している。

ウェブサイトの刷新

新たなウェブサイトは、かつての白を基調としたデザインから黒を背景とするものに一新された。タイル型レイアウトは、流れるようなタイムライン形式へと変わり、情報構成も学生募集中心から、「研究がアメリカ社会に与える貢献」を前面に打ち出す内容にシフトした。

https://www.harvard.edu/

特に、「研究は進歩の原動力である」というメッセージを強調し、医療、テクノロジー、教育、ビジネス分野でのインパクトを前面に押し出している。サイト冒頭のリンクは、ハーバード大学が受け取る研究資金について説明するページに直結しており、スクロールすると、脳卒中リハビリ用ロボットや鎌状赤血球症の遺伝子治療、慢性的な不登校解決技術といった研究事例が紹介される。また、研究を牽引する個々の研究者のストーリーも併せて発信されている。

これらの多くは新たに制作されたものではなく、過去に公開された既存コンテンツの再編集であり、情報の並び替えと焦点の再設定により、強力なメッセージが構築された。

効果

Googleトレンドによれば、「ハーバード」に関連する検索トラフィックは、通常のスコア40〜50から、4月13日の週には最大スコア100にまで急上昇した。多くの人々が公式サイトにアクセスし、大学の研究活動の意義と重要性を認識する機会となったと推察される。

ハーバード大学の危機対応から学べること

  • 一つの物語に集中する
    ハーバードは学生支援や資金調達活動についての発信を控え、最も危機に晒されている「研究」というテーマに絞り込み、サイト全体を統一した物語設計に仕立てた。これにより、訪問者はハーバード大学にとって研究が不可欠であると強く印象づけられた。

  • 迅速に動く
    ハーバードは、コロンビア大学などが類似の問題で政府との対立に直面していた事例を踏まえ、事前に危機発生を想定していた可能性が高い。関心が高まった瞬間を逃さず、最も多くの読者にメッセージを届けることに成功した。

  • 既存資産を活用する
    ハーバードは新たに大量のコンテンツ制作を行わず、過去に積み上げたブランドジャーナリズム資産を再構成することで、迅速な対応と一貫したメッセージ発信を実現した。

今回のハーバード大学の対応は、組織が危機に直面した際に採るべきコミュニケーション戦略の好例といえる。一貫したテーマ設定、スピード感ある行動、そして既存リソースの有効活用が、危機下において組織の信頼と影響力を守る鍵となることを示している。(出典:PR Daily、Harvard University)

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