
2025年のニュースブランド広告費は33.1%減少するとWARCメディアが予測
世界のニュースメディア、広告費の減少とユーザー生成コンテンツの台頭に直面
2025年、世界のニュースメディアに投下される広告費は前年比33.1%減少する見通しであり、雑誌媒体では同じく38.6%の減少が予測されている。WARC Mediaが発表した最新レポートによると、グローバルな視聴者が地政学的緊張や戦争といった重要なニュースに高い関心を寄せる一方で、ニュース媒体の収益はこれらの注目に比例していない。
広告主は従来型の報道機関よりも、GoogleやMetaといった大手デジタルプラットフォームに広告出稿を集中させており、その背景には「コンテンツの安全性」と「ターゲティング精度」への期待がある。今後、ニュースブランドは自社のファーストパーティーデータを活用し、購読モデルや直接的な消費者サービスを通じて収益の多様化を図る必要がある。
プロ制作コンテンツからUGCへの広告費シフト
WARCの『Global Ad Trends』は、広告主の支出がプロフェッショナルによって制作されたニュースコンテンツから、ユーザー生成コンテンツ(UGC)やクリエイター・ジャーナリストへと移行している実態を詳述している。ブランドはハードニュースを避け、代わりにライフスタイルやスポーツといった「ソフト」なジャンルへと移行する傾向が強まっている。
検索キーワードのブロック設定や広告配信の制限により、深刻な報道を扱う記事は収益化が難しくなっている。米国では製薬企業がニュース媒体にとって重要な広告主となっているが、英国ではニュース番組に割かれるテレビ広告費は全体の3.7%にとどまっている。
プロフェッショナルメディアよりUGCが優位に
GroupMの予測によれば、2026年までに広告主の投資先は、プロが制作したコンテンツを下回り、UGCが主流となるとされる。TikTokやポッドキャストのようなプラットフォームは、クリエイター・ジャーナリズムを促進しており、AIによるコンテンツ生成もこの流れを後押ししている。
広告主が上位200ブランド以外の「ロングテール」からの支出を拡大させていることで、この変化はさらに加速すると見られている。
米国広告主の構成変化と若年層の視聴動向
米国ではかつて自動車、小売、通信業界がニュースメディアの広告主を支えていたが、現在はヘルスケア、DTC(消費者直販)ブランド、B2B領域など、信頼性を求める業種へのシフトが見られる。スマートフォンとソーシャルメディアの普及により、若年層を中心にオンラインニュースの消費が拡大しており、英米ではオンライン視聴時間がオフラインを大きく上回っている。一方で、米国のニュースメディアは信頼性の面で課題を抱えており、ギャラップによれば国民のわずか34%しか信頼していない。
インド市場は世界のトレンドに逆行
こうした世界的な変化に反して、インドでは印刷メディアが依然として支配的である。デジタル化が進行する中でも、紙媒体に対する広告投資は堅調で、前年比6%の成長を記録した。インド市場は、印刷部門の拡大を継続する数少ない国の一つである。
ニュースメディアの対応:AI活用とマルチプラットフォーム戦略
ニュースブランドは、こうした広告環境の変化に対応するため、AI技術や独自の広告管理ツールを活用し、広告主への価値提供を強化している。たとえば、CNNは神経言語学的なAIを導入し、ブランドの適合性を精密に評価する仕組みを構築した。
また、広告効果をより的確に測定するため、qCPM(クオリティCPM)などの新たな評価指標が導入されつつある。StagwellがEMEA地域のエグゼクティブを対象に実施した調査では、85%が「ニュースメディアは良質な投資先である」と回答している。
ニューズワークスとピーター・フィールドによる分析によれば、信頼性の高いニュース環境で展開された広告キャンペーンは、利益成長率が88%向上するなど、企業業績にも好影響をもたらしている。(出典:WARC, News Works, Branding in Asia他)