
US:インフルエンサーマーケティング支出、2025年に100億ドル超へ
米国のインフルエンサーマーケティング市場は、予想を上回る成長を続けている。Emarketerの最新レポートによると、2025年のインフルエンサーマーケティング支出は100億ドルを突破すると見込まれており、これは従来2026年までに達成すると予測されていた水準である。
市場の拡大とインフルエンサーマーケティングの位置付け
Emarketerは、インフルエンサーマーケティング支出を「ソーシャルメディアや動画プラットフォームでブランドが支払った広告費を基に、米国のクリエイターによって生み出された収益」と定義している。なお、この数値には有料メディアやソーシャル以外の広告チャネルは含まれていない。
以前の予測では、2026年に100億ドルに達する とされていたが、企業のインフルエンサーマーケティングへの投資は想定以上に増加しており、2024年の支出は16%増から23.7%増へと推定値が上方修正された。さらに、2025年には13億7,000万ドルが追加され、総額105億2,000万ドルに達すると予測されている。
インフルエンサーマーケティングの多様化と成熟
インフルエンサーマーケティングは、単なるSNS上のプロモーション手法から進化を遂げており、有料ソーシャル広告やテレビ、デジタル屋外広告(DOOH)、ポッドキャストなど、非ソーシャルメディアの広告戦略とも連携しながら成長している。
TikTokの不確実性と広告費の分散
バイデン政権が可決し、その後トランプ政権により2024年4月5日まで延期されたTikTok売却法案により、プラットフォームの将来には不透明感が漂っている。この状況にもかかわらず、Emarketerの予測では、TikTokが2024年を通じて米国内で活動を続けることが前提となっている。
一方で、ドナルド・トランプ前大統領は、TikTokの米国事業売却について、国内の4つの企業と交渉中であると発言している。しかし、TikTokが売却された場合、その機能やアルゴリズム、ブランドイメージに影響を及ぼし、ユーザー、クリエイター、広告主にとって不安定な要素となる可能性がある。
ByteDanceが所有するTikTokの先行きが不透明なため、多くのブランドは広告予算を他のソーシャルメディアプラットフォームに再配分し始めている。AdRollのレポートによれば、TikTokのCPM(広告単価)は前年比で80%下落している一方で、PinterestのCPMは120%上昇している。
こうした傾向を受け、Emarketerのレポートでは、TikTokにおけるインフルエンサーマーケティング支出が2025年には17%減少すると予測されている。
「TikTokを第一に考えるマーケターは減少しており、企業はTikTokだけに依存するインフルエンサーとの契約を避ける傾向が強まっている。クリエイター自身も、収益の多様化を図るため、他のプラットフォームでのコミュニティ形成を積極的に進めている」とEmarketerは指摘している。
YouTubeとPinterestへのシフト
Pinterestの広告CPMが急上昇する中、Emarketerの調査では米国のマーケティング担当者の半数以上がYouTubeでインフルエンサーマーケティングを活用すると予測されている。
「インフルエンサーマーケティングはTikTokに限定されるものではない。ブランドやクリエイターは、一時的なトレンドや短期的なスポンサーシップよりも、より安定したコンテンツ戦略や長期的なパートナーシップ、ストーリーテリングを重視するようになっている。こうした傾向の中で、YouTubeはブランドとクリエイターの新たな拠点となりつつある」とEmarketerは分析している。
インフルエンサーマーケティングの今後
2025年に100億ドルを超える規模へと成長するインフルエンサーマーケティング市場は、TikTokの不安定さを背景に、多様なプラットフォームへと分散しながら進化している。企業の戦略も、単発のPRキャンペーンから、より持続的な関係を構築する方向へシフトしており、今後も市場の動向が注目される。(出典:MediaPost, Emarketer)