BOSE、文化的影響力を高めるマーケティング戦略とAIの活用を語る
(画像:YouTube)ボーズのグローバルCMO、ジム・モリカ氏は、ブランドの革新とAI時代の課題について詳細に語った。同氏は、最新製品「Ultra Open Earbuds」を通じて、スタイリッシュさとテクノロジーを融合させたマーケティングを展開し、文化的影響力を高める取り組みを進めている。
ファッションとオーディオの融合
「Ultra Open Earbuds」は、耳に引っ掛ける独特のデザインが特徴で、従来の機能性だけでなく、ファッションアイテムとしての側面も強調されている。モリカ氏は、「ファッションの最も目に見える形の一つがヘッドフォンだ」と述べ、製品を文化的トレンドの一部として位置づける重要性を指摘した。発売前には、NBAオールスター・ウィークエンドやパリのファッションウィークでの紹介を含む一連の戦略的なプロモーションを展開。また、ジュエリーデザイナーやインフルエンサーとコラボレーションし、スタイリッシュさを訴求することで多くの関心を集めた。
インフルエンサー活用とAIの導入
「Ultra Open Earbuds」のキャンペーンでは、インフルエンサーを活用して製品の魅力を広めつつ、AIを活用したコンテンツ制作を強化している。イギリスの「Automated Creative」と提携し、月間約5,000件の静止画や動画コンテンツを生成。AIが提案するクリエイティブのアイデアをもとに、人間が仕上げを行うハイブリッドアプローチを採用している。
モリカ氏は「AIはコンテンツ制作を再編成し、インフルエンサーの役割も変えるだろう」と予測。特にAIの活用が進むことで、よりパーソナライズされたマーケティングが可能になると述べている。
ブランドポジショニングの再定義
ボーズの差別化ポイントとして、モリカ氏は「音楽体験への専念」を挙げる。同社が60年にわたり築いてきた伝統を活かしつつ、音楽を中心にした感情的なつながりを重視するポジショニングを採用している。競合他社が多岐にわたる製品を展開する中で、ボーズは音楽体験に特化したブランドとして独自の地位を確立している。モリカ氏は「ボーズは音楽がより豊かになるブランドとして認識されるべきだ」と述べ、感情的価値を重視したマーケティング戦略を強調した。
若年層へのアプローチとデジタルマーケティング
ボーズは新しい顧客層、特に18歳から24歳の若年層をターゲットにしたマーケティングを展開している。この世代は従来の機能説明型のアプローチに関心を示さないため、TikTokなどのデジタルプラットフォームを活用した直接的なアプローチが重要視されている。また、広告からコンテンツへのシフトが進む中、モリカ氏は「人々の時間と関心を引きつけるためには、広告ではなく魅力的なコンテンツを提供する必要がある」と述べている。
AIと未来展望
AIの進化について、モリカ氏は「AIはマーケティングを効率化するだけでなく、感情的なつながりを深めるツールとしての可能性がある」と語る。同時に、AIの導入が進む中でインフルエンサーやブランドアンバサダーの役割が変化しつつあると指摘した。特にAIを活用することで、ブランドアンバサダーとの関係を強化し、インフルエンサーの影響力を補完する新しい形のマーケティングが生まれる可能性を示唆している。
ブランドの進化と挑戦
モリカ氏は「ボーズを知らない新しい世代にブランドを認知させることが最大の挑戦だった」と振り返る。そのためには、製品の特徴だけでなく、音楽との感情的なつながりを訴求することが重要だったという。AI時代を迎える中で、ボーズはテクノロジーと人間の創造性を融合させ、音楽と感動を届けるブランドとして進化を続けている。この挑戦がどのような成果をもたらすのか、今後の展開が注目される。(出典:Marketing Dive, BOSE他)