T&Gが新ブランド「GENTLE」を始動:ホテルは泊まる場所から、感性を整える場所へ

ホテル・ウェディング事業を展開するテイクアンドギヴ・ニーズ(T&G)が、新たなホテルブランド「GENTLE」を立ち上げる。2027年3月には、1号店となる「THE GENTLE KAMAKURA」を神奈川県鎌倉市腰越に開業する。

「GENTLE」が掲げるのは、「Be Gentle. 自分にもやさしい生き方を」というコンセプトである。単に快適な宿泊環境を提供するのではなく、日常から少し離れ、自分自身のリズムや感性を取り戻すきっかけをつくることをブランドの役割としている。

その核となる考え方が「調律」だ。人の気分は、一日の中でも変化する。活動的になりたいときもあれば、静かに過ごしたいときもある。GENTLEでは、「高揚」「発見」「包容」「余白」という4つの要素を、感性が動く「MOVE」と、心がゆるまる「CALM」に整理。その間を自由に行き来できるよう、空間、サービス、体験を設計する。これは、ホテルの価値を「何を提供するか」だけでなく、「滞在する人の状態をどう変えるか」という視点から捉え直す試みともいえる。

さらにGENTLEは、ひとつのホテルブランドですべてを均質化するのではなく、共通する思想を持ちながら異なる滞在価値を提供するサブブランドを展開する。「THE GENTLE」は土地の日常や文化との出会いを重視し、「GRAND GENTLE」は都市の食、ウェルネス、エンターテインメントなどを通して、都市で過ごす時間そのものを豊かにする。

「THE GENTLE KAMAKURA」が示すブランドの具体像

1号店となる「THE GENTLE KAMAKURA」は、「海のそばにある、もうひとつの鎌倉へ。」をコンセプトに、全16室の客室、ルーフトップテラス、レストラン、ゲストラウンジ、マルチスペース、バンケットなどを備える。建築は千葉学建築事務所、インテリアはDRAFTが手がける。

館内では、空間ごとに異なる音や香りを取り入れ、「MOVE」と「CALM」の切り替えを体験として設計する。客室には気分で選べるバスアメニティや、手挽きで楽しめるROU coffeeを用意。レストランでは鎌倉を中心とした神奈川県産の食材を活用し、イタリアンと鮨の2業態を展開する。また、ゲストラウンジにはNONLECTURE books/artsが選書するライブラリーを設置し、TeaRoomのお茶とともに土地や文化への興味を広げる。本やアート、食、香り、音といった複数の接点を組み合わせ、ホテル内での時間そのものを体験として編集している。

一方で、ホテルの外にも体験を広げる。腰越でのサンセットSUP、鎌倉のトレイルラン、自然の中でのヨガなど、地域の自然や文化に触れるアクティビティを用意する。さらに、地域のアーティストや事業者との協業を通じて、ホテルを地域のカルチャーや情報が交わる場としても位置づける。

「ホテルブランド」から「滞在ブランド」へ

GENTLEの特徴は、ホテルそのものをブランドの中心に置くのではなく、「その場所でどのような時間を過ごし、どのような状態になるのか」までをブランドとして設計している点にある。

「調律」という共通概念を置き、その下に異なる土地や都市、滞在スタイルを持つブランドを展開する構造は、ホテルチェーンにありがちな「どこへ行っても同じ体験」という方向とは異なる。ブランドとして守るものを「建築様式」や「サービス仕様」ではなく、滞在に対する思想に置いているからだ。

特に興味深いのは、「自分にもやさしい」という抽象的な価値を、MOVE/CALMという感情の設計や、音、香り、食、アート、地域体験といった具体的な接点に落とし込もうとしていることである。ブランドコンセプトを単なるコピーで終わらせず、顧客体験の設計原則へ変換できるかが、今後のブランド構築におけるポイントになるだろう。

T&Gは「GENTLE」を通じて、ホテルを単に「泊まるための施設」ではなく、日常から少し離れ、自分自身や土地との関係を捉え直すためのメディアとして捉えようとしている。2027年3月に開業する「THE GENTLE KAMAKURA」は、その思想を最初に具体化する場となる。(出典・画像:テイクアンドギヴ・ニーズ プレスリリースより)

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