Novo Nordisk、社名・企業文化を刷新 肥満治療薬市場での競争力回復へ戦略を再構築

デンマークの製薬大手Novo Nordiskは、肥満治療薬市場で失いつつあるシェアを取り戻すため、企業ブランドと組織文化の刷新に乗り出した。社外向けのブランド名を「Novo」とし、事業運営の考え方や組織の働き方も見直す方針である。

同社は最大の競合であるEli Lillyとの競争が激しくなる一方、新たな大型製品を生み出し、長期的な成長軌道を改めて示すよう投資家からも圧力を受けている。9月21日に予定されている「Capital Markets Day」では、こうした環境変化を踏まえた事業戦略の詳細が示される見通しだ。

NovoのCEO、Mike Doustdar氏はCNBCとの独占インタビューで、今回のブランド刷新と企業文化の改革は、競争環境の変化に対応し、会社の戦略そのものを進化させるための一連の取り組みの一部だと説明した。
同氏によれば、過去4〜5年の間にNovo Nordiskを取り巻く環境は大きく変化した。そのため、今後10年間を見据えて、これまでの事業の進め方を再調整し、戦略的な方向性についても改めて検討する必要が生じたという。
Doustdar氏は、同社が直面する課題は多岐にわたるとし、肥満治療薬市場で競争力を維持するには、研究開発や製造だけでなく、販売やマーケティングを含む幅広い領域で改善が必要だと述べている。

今回の改革は、単に競合から市場シェアを奪い返すための短期的な対策ではない。肥満治療薬の急速な普及によって、患者の行動や市場構造そのものが変わったことを受け、企業としての意思決定や顧客との向き合い方を再設計する動きと位置づけられる。

「Novo」へのブランド刷新と、変化した患者行動への対応

Novo Nordiskは今回、「Lasting Health Starts Now(持続的な健康は今ここから始まる)」を新たな企業ブランドの軸として打ち出した。長期的な健康づくりを先送りせず、患者が今この瞬間から行動を始めることを促すメッセージである。
同社は新しいマーケティングの方向性について、一般の人々やさまざまなステークホルダーとの関係性と信頼を高めるとともに、同社が生み出す科学的なイノベーションを、人々の日常生活により近いものとして伝えていくことが目的だとしている。

一方、企業ブランドと組織文化の大幅な変更が、肥満治療薬市場でのシェア低下を直接的に受けたものなのかについて、Doustdar氏は別の見方を示した。今回の改革は、競合企業に押されていることだけを理由とするものではなく、事業環境そのものが大きく変化したことへの対応だという。

特に大きな変化をもたらしたのが、肥満治療薬市場の急成長である。Doustdar氏によれば、肥満治療薬の普及によってNovoの患者層は大きく変わり、市場は従来の糖尿病治療薬とは異なる、より消費者志向のモデルへと移行した。
糖尿病治療では長期的に薬を使用する患者が多いのに対し、肥満治療では患者が治療を始めたり、途中で中断したりするケースがより頻繁に生じる。そのため、Novoには患者がその時々に置かれている状況をより正確に捉え、変化するニーズに迅速に対応することが求められている。

「事業環境は、わずか10年前と比べても劇的に変化した」というのがDoustdar氏の認識である。市場の変化に合わせて、意思決定のスピードと明確さを高めることも、今回の企業文化改革の重要なテーマとなる。
なお、「Novo」は今後のブランドとして使用される一方、会社の正式名称は引き続きNovo Nordiskである。同社名は、デンマークの製薬会社Novo Terapeutisk LaboratoriumとNordisk Insulinlaboratoriumという2社が1989年に合併したことに由来する。

4つの新原則と「Wegovy」経口薬が示す成長への道

Novoは、競争が激化し、製品の多くが消費者への直接販売(DTC)へと移行していく市場で優位性を築くため、新たな企業文化を支える4つの原則も掲げた。

第一は、患者を最優先にしたイノベーションを進めること。第二は、すべてのステークホルダーにより大きな価値を生み出すため、企業としてのパフォーマンスを高めること。第三は、優先順位をより明確にし、業務プロセスをシンプルにすることである。そして第四が、患者の安全と倫理を決して犠牲にしないことである。
Doustdar氏は、戦略は会社が進む方向を定めるものだが、それだけでは不十分だと説明する。戦略を実際の行動に移すには、従業員一人ひとりがその実行を支えられる企業文化が必要だという考えである。

Novoにとって明るい材料もある。今年は経口タイプの「Wegovy(ウェゴヴィ)」を発売し、肥満治療薬市場で新たな成長機会を得た。6月時点でWegovyの経口薬は処方件数が300万件を超えるなど、発売後の立ち上がりは好調である。Novoの株価は年初来で約15%下落しているものの、経口薬の成功は同社にとって重要な追い風となっている。

さらに、この錠剤はEli Lillyが展開する競合の減量薬「Foundayo(ファウンデイオ)」に対して先行する立場を築いた。Doustdar氏は、競争が存在する中でもNovoが経口肥満治療薬市場で「圧倒的なシェア」を維持していると説明する。
同氏によれば、医師の評価でもWegovyの錠剤はLillyの製品より効果が高いとされ、体重減少率は約17%に達するという。
ただし、Novoを取り巻く環境は決して楽観できるものではない。IQVIAのデータを引用したEli Lillyの決算資料によれば、第2四半期の肥満治療薬市場におけるシェアはLillyが60.9%、Novoが38.8%であり、Novoは依然として競合を追う立場にある。また、同社は最近、開発段階にあった心血管系治療薬について3つの臨床試験を中止している。

こうした状況を踏まえると、今回の「Novo」へのブランド刷新は、単なる社名変更ではない。肥満治療薬の急拡大によって患者、競争構造、販売モデルが変化するなかで、研究開発から製造、マーケティング、意思決定、組織文化までを一体で見直し、次の成長段階に向けて企業そのものを作り替えようとする動きである。9月21日のCapital Markets Dayで示される具体的な戦略が、この変革をどこまで実際の成長につなげられるかを占うことになる。(出典:CNBC、画像:iStock)

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