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ライブネイション、独占訴訟で米司法省と和解へーチケットマスター問題が発端となった反トラスト訴訟

コンサートプロモーションとチケット販売を手がける世界最大級のライブエンターテインメント企業であるLive Nation Entertainmentが、米国政府との大規模な独占禁止法訴訟で暫定的な和解に達した。問題の中心には、同社傘下のチケット販売会社Ticketmasterをめぐる市場支配の疑いがある。
この訴訟は、2022年にTaylor Swiftの大規模ツアー「The Eras Tour」のチケット販売が混乱したことを契機に、米政府が提起したものである。販売システムの障害により、多くのファンが長時間オンラインで待たされる事態が発生し、同社の市場支配力に対する批判が急速に高まった。これを受け、United States Department of Justice(米司法省)は、ライブネイションがライブエンターテインメント市場で独占的地位を築いていると主張し、訴訟に踏み切ったのである。

チケット販売とプロモーションの自由化

今回の和解案はまだ裁判所の正式承認を得ていないが、実施されればライブネイションの事業慣行に一定の制限が加わることになる。
具体的には、コンサート会場が複数のチケット販売会社を利用できるようにすることが求められる。これまで業界では、会場がチケットマスター以外のサービスを採用すると不利益を被る可能性があるとの指摘があり、競争を阻害しているとの批判が強かった。
また、ツアーアーティストが公演を行う際、他のプロモーターを選択する自由も拡大される見通しである。さらに同社は、独占禁止法違反を理由に訴訟を起こしていた約40州に対し、総額2億8000万ドルの損害賠償を支払うことで合意した。加えて、ライブネイションと独占的な予約契約を結んでいた13の会場についても、今後は他のプロモーターが利用できるようになる。
当初、政府は企業分割を含む強い措置を検討していたとされる。そのため、和解が成立すれば、ライブネイションにとっては当初想定されていたほど厳しい結果にはならない可能性がある。

一部州は和解に反発、訴訟継続へ

この和解案は法廷で明らかになり、政治メディアの報道によって広く知られることとなった。しかし訴訟に参加している州政府の中には、この合意に反対する動きもある。
例えばニューヨーク州の司法当局は、ライブネイションが長年にわたり違法な独占的地位を利用して公演制作コストを押し上げ、巨額の利益を得てきたと主張している。同州は、今回の和解案が市場支配の問題を根本的に解決するものではなく、結果的に企業側に有利に働く可能性があると批判している。
訴訟を担当する連邦判事Arun Subramanianも、和解の進め方に不満を示した。裁判の進行中に当事者間で合意が成立したことについて、裁判所や陪審に対する敬意を欠く対応であると指摘している。また一部州の弁護士は、独自に訴訟を継続する方針を示しており、法廷闘争は完全には終結していない。

ライブネイションの巨大な市場規模

ライブネイションはライブ音楽ビジネスにおいて圧倒的な規模を誇る企業である。2025年には世界で5万5000件以上のコンサートを開催し、来場者数は1億5900万人に達した。さらに約460の会場に出資しており、ライブイベントの企画・運営からチケット販売までを垂直統合するビジネスモデルを構築している。
同社は2010年にチケットマスターを統合して以降、世界最大級のチケット販売ネットワークを形成した。しかしその強大な影響力は、ファン、政治家、アーティスト、競合企業からたびたび批判を受けてきた。特に、チケット価格に上乗せされる手数料やサービス料が高額である点が問題視されている。
司法省は裁判の中で、ライブネイションが市場支配力を利用して会場やアーティストに契約を強要し、競争を妨げた結果としてファンに過剰な手数料を負担させていると主張した。

裁判で明らかになった業界の力学

裁判では、ニューヨークのアリーナBarclays Centerの元幹部ジョン・アバモンディが証言し、ライブネイションの経営陣から圧力を受けたと主張した。証言によれば、同アリーナが競合チケット会社のSeatGeekと提携した際、ライブネイションのCEOであるMichael Rapinoがコンサートの開催を別会場へ移す可能性を示唆したという。
録音された電話では、ラピーノが「新しい競争相手と組むなら、チケットやコンサートの供給は難しくなるだろう」と述べたとされる。アバモンディはこれを脅しと受け止めたと証言した。
これに対しライブネイション側は、発言が脅迫に当たるとの見方を否定している。また同社は、近隣に競合アリーナが開業したことが会場の人気低下の原因であり、政府はライブイベント業界の複雑な構造を誤解していると主張してきた。
同社によれば、チケット価格を最終的に決定するのはアーティスト側であり、追加手数料の多くはチケット販売会社ではなく会場に配分される仕組みだという。ただし現実には、多くの公演でライブネイションが会場運営やアーティストマネジメントにも関与しているため、業界内での影響力が極めて大きいと指摘されている。
なお、和解案が報じられた後、ライブネイションの株価はおよそ6%上昇した。さらに同社は、Bruno Marsなど人気アーティストによるツアーの好調な売上を背景に、2026年の収益が過去最高水準に達する可能性があるとしている。(出典:BBC、画像:iStock)

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