ペプシ・ゼロシュガーが仕掛ける「ポスト・ペプシチャレンジ」

広告史上最大の舞台に持ち込まれた「ペプシチャレンジ」

ペプシは、長年にわたりブランドの象徴的施策として知られる「ペプシチャレンジ」を、ペプシ・ゼロシュガーを軸に再構築し、その舞台として第60回スーパーボウルを選んだ。ブラインドテストによってコカ・コーラではなくペプシを選ばせるというこの挑戦は、1975年に始まり、時代ごとに姿を変えながら繰り返し復活してきた。

今回放映された30秒のスーパーボウルCMでは、コーラを愛するホッキョクグマが主人公として描かれる。ブラインドテストでペプシ・ゼロシュガーを選んだことをきっかけに世界観が揺らぎ、やがて精神科医のもとを訪れるというストーリーが展開される。広告は、ペプシコ・コンテンツスタジオとBBDOがクリエイティブを主導し、映画監督タイカ・ワイティティがメガホンを取り、本人も精神科医役として出演している。サウンドトラックにはクイーンの「アイ・ウォント・トゥ・ブレイク・フリー」が用いられ、ポップカルチャーへの目配せも随所に盛り込まれている。

コカ・コーラの象徴を借りる、挑発的ストーリーテリング

今回のキャンペーンが注目を集める理由の一つが、ホッキョクグマという存在の扱いである。この動物は、1920年代からコカ・コーラの広告に登場し、1990年代以降は同ブランドを象徴するマスコットとして広く認知されてきた。ペプシはあえてこの文化的アイコンを物語の中心に据えることで、両ブランドの競争関係をユーモアと皮肉を交えて可視化している。

ペプシ側はこの演出を、単なる挑発ではなく、消費者の嗜好データを遊び心をもって示す手法と位置づけている。ペプシのマーケティング担当副社長グスタボ・レイナは、2025年に実施されたペプシチャレンジの結果を引き合いに出し、「アメリカ人の約3分の2がペプシをより美味しいと評価している」と述べ、誰もが既存の選択を見直す権利を持っていると強調した。

スーパーボウルの“その先”を見据えた成長戦略

本キャンペーンは、スーパーボウル単発の話題づくりにとどまらない。屋外広告、テレビ、ソーシャルメディア、クリエイターコンテンツ、ポッドキャストなど多様なチャネルを横断し、イベント前後を含む長期展開が計画されている。X(旧Twitter)上でのプレゼント施策、Gopuffを通じたペプシチャレンジキットの無料配布、さらにはベイエリアを中心としたホッキョクグマの出没演出など、参加型の仕掛けも数多く用意されている。

市場データを見ると、2025年1〜9月期における炭酸飲料市場シェアは、ペプシ・ゼロシュガーが1.4%、コカ・コーラ・ゼロが4.6%と依然として差がある。一方で、販売数量の伸び率ではペプシ・ゼロシュガーが18.1%増と、コカ・コーラ・ゼロの4.8%増を大きく上回っている。さらに、100万世帯以上への新規普及を達成し、30%を超える成長率を記録するなど、勢いは明確である。

レイナはこの取り組みを「大きなリセットの瞬間」と位置づけ、ペプシ・ゼロシュガーを今後の成長を牽引する中核ブランドとして、教育と娯楽を融合させた“エデュテインメント”型コンテンツに注力していく考えを示している。ペプシチャレンジの復活は、過去の成功体験への回帰であると同時に、挑戦者としてのブランドDNAを再び前面に押し出す戦略的な選択なのである。(出典:Pepsico, Marketing Dive他)

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