ダヴが『ブリジャートン』と描く「噂に縛られない美」──エンタメIPを価値観接続へ昇華するブランド戦略

世界観への便乗ではなく、思想の接続としてのキャンペーン設計

ユニリーバ傘下のダヴは、Netflixの人気シリーズ『ブリジャートン』シーズン4の配信開始に合わせ、新キャンペーン「彼らに語らせよう(Let Them Talk)」を展開した。多くのブランドが作品の話題性を活用する中、ダヴは単なるタイアップにとどまらず、自社が長年掲げてきた「型にはまらない美の肯定」というブランド思想を、作品世界と重ね合わせるアプローチを選択している。
キャンペーンの中心に据えられたのは、「噂や評価に左右されないこと」というメッセージだ。広告映像では、『ブリジャートン』を象徴する豪奢な舞踏会の空間を舞台に、オンラインとリアルの双方で影響力を持つ5人のクリエイターが登場する。彼らは他者の視線や憶測を意に介さず、自らの価値を堂々と体現する存在として描かれ、「真の美は仮面の裏には隠せない」「真実を王冠のように身にまとう者こそが真の貴族である」といったナレーションを通じて、ダヴの価値観が明確に打ち出されている。

クリエイターと限定商品で広げる「彼らに語らせよう」という思想

映像施策と並行し、ダヴはインフルエンサーとの連動施策も強化している。「彼らに語らせよう」というメッセージを、起用されたクリエイターそれぞれの言葉と文脈で発信させることで、画一的な美の基準への問題提起を多層的に広げる狙いだ。キャンペーンのクリエイティブは、広告代理店Mythologyが担当している。
また、本キャンペーンに合わせて『ブリジャートン』とのコラボレーションによる限定商品コレクションも投入された。販売は米国のターゲット限定で、ボディウォッシュ、ボディスクラブ、制汗・消臭スティック、固形石鹸、ボディミストといった複数カテゴリーを網羅する。香りは「ムーンリット・マスカレード」「ウィスパリング・ウィステリア」「ラズベリー・ランデブー」「ラブ&メドウズ」の4種で構成され、作品のロマンティックな世界観を日常に持ち込む設計となっている。

IPビジネスの中心にある『ブリジャートン』とNetflixの期待

『ブリジャートン』を軸にしたパートナーシップは、ダヴに限った動きではない。Netflixはシーズン4の配信に向け、アリュール・ブライダルズ、パンドラ・ジュエリー、NYXコスメティックス、ジェニーズ・アイスクリーム、ウォルマート、ウィリアムズ・ソノマなど、多様なブランドと連携を進めている。加えて、リバティ・オブ・ロンドンとの協業では、同社を象徴する植物柄を用いたファッションおよびホームアイテムの展開も行われている。
Netflixにとって『ブリジャートン』は、依然として重要なフランチャイズである。『ストレンジャー・シングス』や『アドレッセンス』といった新作が注目を集める中でも、同シリーズは視聴ランキング上位を維持してきた。原作はジュリア・クインによる小説シリーズで、ブリジャートン家の8人の兄弟姉妹それぞれを主役に据えた恋愛物語が、シーズンごとに描かれている。現在のシーズン4は、全体構成における折り返し地点に位置づけられる。
Netflixの公表データでは、シーズン1が歴代視聴数ランキング7位、シーズン3が9位にランクインしており、シリーズの持続的な人気は数字の上でも裏付けられている。ダヴの今回の取り組みは、巨大IPの消費に留まらず、ブランドの価値観を文化的文脈へ接続する試みとして、同作をめぐるマーケティング展開の中でも特徴的な位置を占めている。(出典:MarketingDaily、PHOTO BY LIAM DANIEL)

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