ハヴァスとWPP、M&A協議の噂が浮上

週末、WPPに関する買収・合併の憶測が英メディアで相次ぎ、同社を取り巻く状況が再び注目を集めている。英紙『The Times』は、フランス系広告大手ハヴァス(Havas)が、ロンドンに本拠を置くWPPの一部または全体の買収可能性について社内で検討を行ったとみられると報じた。

同紙はさらに、プライベートエクイティ大手のApolloとKKRが、WPPの保有資産に対して個別に分析を進めていると伝えている。こうした動きは、WPPの株価がFTSE100からの除外が取り沙汰されるほど低迷し、“悪夢のような一年”となった状況に重なる。Timesによれば、同社の現在の企業価値は約30億ポンドで、2017年のピーク時に記録した240億ポンドから大幅に減少した。ヘッジファンドによるショートポジションが8.5%に達しているとされ、さらなる株価下落を見込む投資家の姿勢も読み取れる。

広告業界では、昨年末にオムニコムとIPGの買収が発表されたことで「次はどこが買収されるのか」という憶測が強まっており、この2社は今月末までに取引の完了を予定している。さらに、今年7月にはWPPとアクセンチュアが統合の可能性について初期的な協議を行ったとの報道もあった。

今月の別の報道では、WPPがマッキンゼーを起用して全社的な戦略見直しを進め、事業の効率化やGo-to-Market戦略の再構築を支援させていると伝えられた。新CEOのシンディ・ローズは先月のアナリスト向け説明で、クライアントへの提供価値をより統合的かつシンプルな形にまとめる必要性を強調した。ただし、戦略的見直しが即座に企業売却を意味するかどうかについては言及しておらず、マッキンゼーがM&Aの検討を担当しているかどうかも明らかではない。

WPPをめぐる動きと並行し、電通も8月に国際事業の一部または全部を含む「戦略的オプション」の検討を進めていることを明かした。ハヴァスのCFO、フランソワ・ラロズは先月の決算説明会で、電通の国際資産について「検討対象として排除しない」と述べ、買収余地があるとの姿勢を示した。

ハヴァスは、電通が2012年に買収した旧Aegis Groupに関して一定の知見を持っている。同グループはかつて英国でメディアに特化した広告会社として成長し、ボローレ・グループが26.4%の株式を保有していたが、Aegis買収の際に電通がこれを取得した経緯がある。

規模だけを見れば、WPPは依然としてハヴァスよりはるかに巨大である。しかし、背後にボローレ・グループの資本支援がある場合、この取引が成立する可能性は十分にあるとの見方も強い。広告持株会社の再編が進む中で、WPPとハヴァスをめぐる一連の動きは、次の業界地図を左右する要因となりつつある。(出典:MediaPost他)

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