
日清製粉ウェルナ「マ・マー」ブランド刷新 キャラクターお母さんは伝道師に
70周年を迎えた国民的ブランドの再定義
1955年にマカロニ販売から始まった日清製粉ウェルナの「マ・マー」は、日本のパスタ文化を牽引してきたブランドである。家庭用パスタ市場でおよそ37%のシェアを持ち、業界トップの地位を長年維持している。その象徴的な赤いパッケージは、多くの家庭の食卓で馴染み深い存在だ。
2025年、発売70周年を迎える節目に、同社は「マ・マー」のロゴとパッケージを刷新した。基調の赤を引き継ぎつつも、直線やゴールドを用いたデザインで、品質感と現代性を打ち出した。
リブランディングの背景
一見順調に見えるブランドの裏側には課題があった。日清製粉ウェルナが提供する商品の多くは、利便性と高品質を両立させたものだが、昭和期から続く“お母さんの味方”というイメージが強く残り、現代の多様な生活スタイルに十分に対応している印象を持たれていなかった。
マ・マー誕生当初は、家庭の中心にいる「お母さん」を応援する存在として打ち出されていたが、現代では調理を担うのが必ずしも母親とは限らない。単身世帯や共働き世帯の増加、家事分担の変化などに合わせ、ブランドも進化を求められていた。
消費者調査から見えた「赤」の力
リブランディングの第一歩として実施した調査では、「マ・マーといえば赤」という回答が最も多く、色がブランドの象徴として強く認知されていることが判明した。赤には「安心感」「温かさ」「やさしさ」といった印象が結びついており、そのイメージを活かしながらも、より時代に合った品質感の表現が課題となった。調査担当者は、「赤に安心感や温かさ、やさしさを感じる人が多かった。これは私たちが大切にしてきた“家庭的な信頼感”の証でもあり、ブランドの根幹を改めて確認できた」と振り返る。
時代のニーズを掴むヒット商品
「マ・マー」は常に時代の変化を捉え、商品を進化させてきた。代表例が「マ・マー 早ゆでスパゲティ FineFast」シリーズだ。従来の7分茹でを3分に短縮し、忙しい現代人のニーズに応えた。同社の渡辺嘉久氏は「この商品はここ数年、日本で最も売れているパスタの一つ」と語る。
また、電子レンジだけで調理できる常温保存の生パスタなど、新たなカテゴリー開発にも挑戦している。こうした商品開発の背景には「品質に対する誇り」があるという。同氏は「トップブランドである以上、品質の良さを正しく伝えることが、ブランド維持の鍵になる」と語る。
新コンセプトは「パスタのおいしさを、すべての人へ。」
リブランディングで掲げた新しいブランドコンセプトは、「パスタのおいしさを、すべての人へ。」。難しい言葉を避け、誰にでも届くシンプルなメッセージにした。安心感とおいしさは表裏一体であり、おいしいからこそ安心して選ばれるブランドでありたい、との思いが込められている。
ロゴとパッケージの刷新
新しいロゴは、従来の丸みある書体に直線を加え、親しみと品質感を両立。特に「・(なかてん)」の形や文字の角度など、細部まで検証を重ねたという。
また、スマートフォンなど小さな画面でも認識しやすいよう、情報量を整理して視認性を高めた。パッケージデザインでは、長年親しまれてきた赤を中心に据えつつ、トリコロールカラーの白をゴールドに変更。赤・緑・ゴールドの3色を基調とし、直線を用いた構成で洗練された印象に仕上げた。

キャラクターの役割転換―「お母さん」から「伝道師」へ
長年ブランドの象徴として親しまれてきたエプロン姿の「マ・マー人形」もリニューアルされた。従来は“家庭的な温もり”を表現する存在だったが、今後は「おいしさの伝道師」としての役割を担う。ブランドの原点を受け継ぎながらも、時代に即した存在へと進化させる狙いがある。
ブランドの継承と革新
70年続くブランドにおいて、最も難しいのは「変えすぎず、しかし変わり続けること」だ。マ・マーは、家庭の象徴からすべての人の食卓へ。その再定義は、単なるデザイン変更ではなく、社会の多様化に寄り添う企業姿勢の表れである。(出典:日清製粉ウェルナ、日本経済新聞他)
















