
ANA、マルチブランド戦略を再編 エア・ジャパンが運航終了へ
ANAホールディングスは、グループの航空ブランド戦略を再構築する一環として、エア・ジャパンの運航を2026年3月をもって終了すると発表した。これにより、今後のANAグループの航空事業は「ANA」と「Peach(ピーチ・アビエーション)」の2ブランド体制に集約されることになる。
エア・ジャパン、わずか2年での幕引き
エア・ジャパンは、ANAグループ傘下の中距離国際線LCC(格安航空会社)として2024年2月に就航したばかりだった。ブランドコンセプトは「新しい形の日本らしさ」で、成田を拠点にバンコク、ソウル、シンガポールなど東南アジア路線を中心に運航していた。しかしデビューから2年足らずで、2026年3月29日をもって全便が終了する。最終便はシンガポール・チャンギ空港を同日午前0時55分に出発し、東京・成田に到着する予定だ。
エア・ジャパンは声明の中で、「これまでANAブランドと並行して運航を行ってきましたが、来年度以降はANAブランドでの運航に一本化します」と発表した。ANAグループとしては、複数ブランドによる国際線展開の見直しを図り、より効率的な事業運営体制に移行する狙いがある。
再編の背景と狙い
今回の決定についてANAグループは、「昨今の事業環境の変化に柔軟に対応し、グループ全体の収益性と競争力を最大化するため」と説明している。エア・ジャパンの運航終了は、パンデミック以降の航空市場再編の流れの中で、ANAグループが改めてブランドの最適配置を見直した結果といえる。
これまでANAグループは、フルサービスキャリアの全日本空輸(ANA)、ハイブリッドモデルのエア・ジャパン、そしてLCCのピーチ・アビエーションという3ブランド体制を構築していた。新たな方針では、フラッグシップとしてのANAブランドに長距離・ビジネス路線を集約し、Peachには短中距離のレジャー需要を担わせることで、明確な棲み分けと経営資源の集中を進める。
ANAグループが今後進めるデュアルブランド戦略は、他の航空大手が採用している構造に近づくものだ。例えば、シンガポール航空グループが「Singapore Airlines」と「Scoot」、ルフトハンザグループが「Lufthansa」と「Eurowings」で二層構造を構築しているように、ANAも国際競争の中でシンプルかつ柔軟なブランドポートフォリオを志向する。
ANAグループの次なる展開
今回の再編は、ANAが長年進めてきたブランド多角化戦略から、効率と競争力を重視した選択と集中のフェーズに入ったことを象徴している。エア・ジャパンの終了は惜しまれるが、グループ全体の持続的成長を見据えた構造改革の一環として、次のステージに向けた布石といえるだろう。(出典:ANA, Branding in Asia)
















