
マーケターはどのようにして消費削減の立役者になれるか
消費者が地球にとってより良い選択をする手助けをする、つまりより良い消費形態の構築者としてマーケターを捉える新しいビジネスモデルが浮上してきている。カンヌライオンズ・フェスティバルのクリエイティブ・インパクト・セッションでは、消費者の需要を変化させることで世界を変え、かつ商業的成長を達成する方法について議論が交わされた。
創業者のように考える
「世界を変えたいのなら、創業者のように考えなければならない」と、変革ブランドの創造に関する本『Obsolete』の著者であるクリス・ベイカーは述べている。彼は「消費者支出の1%を、世界に良い影響を与えるブランドに振り向けるとしたら、毎年7000億ドルになる。驚異的な数字だ。だからこそチャンスは大きい」と、セッションで語った。
しかし、ベイカーは、リソースも資金も経験も豊富な大企業が動きが遅いことに言及した。例えば、デオドラントやボディソープを提供するパーソナルケアブランド「ワイルド」のような企業は、持続可能な製品を製造して成功を収めている。
「ワイルド」のブランド責任者であるイーライ・ミアンサロウは、ブランドの使命が明確であることを強調した。このブランドは、これまでに88万キログラムを超えるプラスチックを埋立地から救っており、これは自由の女神4体分に相当する。
ワイルドは、ユニリーバに買収される以前に、急成長を遂げていた企業であり、前年比200%の成長を記録し、2020年には2,500万個のデオドラントリフィルを販売した。現在では、約300万人のオンライン顧客を持ち、世界120,000店舗で製品が販売されている。
効果的なマーケティング戦略
ベイカーとミアンサロウは、消費者に良い影響を与えつつも商業的な成功を収めるために、いくつかの重要な戦略を提案した。
- 人々が真に気にかける問題を見つける
「現実の変化は、既存の現実と戦うことではなく、古いモデルを時代遅れにする新しいモデルを構築することで起こる」とベイカーは述べた。彼は、ホームレス問題に取り組むソーシャル・エンタープライズ「Change Please」を例に挙げ、古い問題に対して新しい視点を持つ重要性を説明した。 - コミュニティの力を最大限に活用する
「顧客を考えるのではなく、コミュニティを考えなさい」とミアンサロウはアドバイスした。ワイルドには「ワイルディングズ」と呼ばれるVIPコミュニティがあり、約2万人が参加し、新発売情報をいち早く手に入れることができる。このコミュニティは、ブランドと消費者とのつながりを深める重要な要素となっている。 - 変化を熱望させる
持続可能な商品を売る際にも、単に「エコ」というメッセージを伝えるだけではなく、感情的な魅力を加えることが重要である。ワイルドは、製品デザインにこだわり、インフルエンサーと協力することで、消費者が投稿したくなるような製品を提供している。 - リスクを取って素早く行動する
例えば、テスコがワイルドと提携した際、小さなブランドにとっては大きな弾みとなり、彼らは新しいシャンプーとコンディショナーを発売するために奔走し、ブランド認知度を大きく高めた。 - 内側から破壊する
ベイカーは、「変化を生み出すために新興企業である必要はない」と述べ、既存の企業が積極的に変革を推進する重要性を強調した。例えば、ネスレがGLP-1ユーザー向けに特別な食品をデザインしたことを挙げ、このような新しい発想が業界の枠を超えて影響を与えたと説明した。
「私たちが今直面している混乱は、脅威でもあり、チャンスでもある」とベイカーは結論を述べた。そして、「創造力、専門知識、リソースを駆使して、その思考を大きな問題にどう適用できるかを想像してみてほしい」と呼びかけた。(出典:WARC、The Cannes Lions 2025 Festival of Creativity)