UK:大英博物館がリブランディングに取り組む
大英博物館は、エージェンシーと協力してブランド監査を実施し、その結果を踏まえた新たなブランド戦略の策定を進める予定である。
先日発表された入札の中で、美術館は新しいブランディングを「首尾一貫した説得力のある視覚的・音声的アイデンティティ」へと変換するパートナーを求めている。この新しいアイデンティティについては、「ブランドの理念と物語を伝える明確なシステム」として設計され、館内外の製品やサービスを含む多様な場面で使用できるものとする方針である。さらに、このシステムは地域、国内、国際的な観客に一貫して適用可能であることが求められている。
リブランディングの背景
大英博物館は、その歴史的基盤を揺るがす一連の問題を受け、「オムニ・クライシス」とも呼べる状況に直面している。この対応として、15万ポンドを投じたブランド再構築プロジェクトを始動し、新たなアイデンティティの確立を目指している。
同館は「植民地時代の論争」「財政難」、さらには「内部の窃盗事件」という複数の課題に直面しており、自らの存在意義を再構築しようとしていると報じられている。また、ベニンのブロンズ像やパルテノン神殿の彫刻といった収蔵品の返還問題が、批判の中心となっている。これらの品々は、それぞれの出自国から持ち出された経緯が議論を呼んでいる。
一部の批評家は「大英博物館が所有するすべてを返却すれば、館内には何も残らない」と主張する。しかし、実際には同館の収蔵品の大部分が英国由来のものである。このような批判に対し、館のリーダーシップが十分な反論を行えなかったことが、さらなる問題を引き起こした。
2023年には、職員による収蔵品の盗難事件が発覚し、2,000点以上の品物が失われた。これにより、大英博物館の存在意義を支える「収蔵品の管理」という前提が揺らいだとされる。
こうした状況を受け、同館は「ブランドの見直しと再構築」に向けた取り組みを開始した。アイデンティティの刷新を含む大規模なプロジェクトが進行中である。また、施設そのものの改修計画も立てられている。多くのギャラリーが時代遅れであると指摘されており、その「完全改装」が予定されている。
進化する博物館の役割
かつて「静かな学問の場」であった博物館は、現代の文化的論争の最前線に立たされている。これには、「同意と能力主義」の問題から「略奪品と芸術家の関係をどう扱うか」といった課題が含まれる。大英博物館はこれらの現代的なジレンマに取り組みながら、新たな方向性を模索している。
リブランドが成功するかどうかは、同館が抱える複雑な課題にどう応えるかにかかっている。収蔵品の管理体制の見直しと批判への適切な対応が、その信頼回復にとって鍵となる。大英博物館は、新たな役割を果たす文化施設としての再構築を目指している。 (出典:The Week, The Guardian他)