電通グループ、成長の泥沼からの脱出策を新経営陣に託す

電通グループは4月1日付のCEO後継人事を発表した同日、2025年度通期決算を公表した。純収益は前年比0.3%減とわずかに後退した一方、有機的収益成長率は0.5%増と小幅ながらプラスを確保した。2026年の業績見通しは横ばいから1%成長と慎重だ。地域別では、日本が2~3%の増加を見込む一方、米州は2%減、欧州・中東・アフリカおよびアジア太平洋はそれぞれ1%減を想定する。成長加速に向けた改訂戦略を今後数カ月以内に公表予定であることから、当面は年間1%以下の低成長を前提とする。

日本のみが成長、海外は減速

2025年は、日本市場が通年で6.2%増と唯一の成長エンジンとなった。他地域はすべて減収で、米州は通年で6.2%の有機的減収を記録。海外事業の苦戦が全体の足を引っ張る構図が鮮明となった。さらに、同社は第4四半期に約20億ドルののれん減損損失を計上。これにより過去最大の年間損失を記録した。2025年および2026年の配当は見送られる。株価は発表後ほぼ横ばいで推移した。業績の厳しさは織り込み済みであり、むしろ経営刷新と構造改革の継続が一定の評価を受けたとみられる。

「ワン電通」見直しと権限移譲

今回の経営交代に伴い、これまで推進してきた「ワン電通」戦略の見直しも表明された。今後は地域リーダーにより大きな自律性を付与し、事業運営のスピードと市場適応力を高める方針だ。また、国際事業については、買い手側の明確な関心が現時点で確認されていないものの、提携や売却の可能性を引き続き模索するとしている。ポートフォリオ再編は依然として選択肢にある。効率化も継続中だ。ここ数年で子会社数を1,000社から500社へ半減させたほか、昨年は計画3,400人の人員削減のうち2,100人を実施。持株会社モデルのスリム化を進めてきた。

メディア事業は堅調、次期CEOの覚悟

国際事業において、メディア事業は純収益の約50%を占める重要領域だ。具体的な数値は示されなかったものの、「堅調」「有機的成長が好調」と説明され、収益基盤としての存在感を維持している。

一方で海外の広告市場では、AI技術の導入加速や巨大ネットワーク化が進行しており、競合他社であるインター・パブリック・グループ(IPG)とオムニコムの統合や、パブリシスの積極的な売上成長などが対抗勢力として存在する。これらとの競争が電通の国際戦略を一段と厳しくしているとの見方もある。

4月1日付で次期CEOに就任予定の佐野傑氏は声明で、急速に変化する競争環境の中でリーダーシップとマネジメントの進化を加速させると強調した。戦略立案から実行までを一貫して支援する「真の成長パートナー」としての地位確立を掲げ、ステークホルダーとの信頼強化と企業価値の持続的向上を目指すとする。

電通は新たなグローバル経営体制で、従来のマトリックス管理構造の簡素化を進めている。具体的には、Global COOやGlobal Presidentといった中間的なマネジメントポジションを廃止し、地域CEOや事業本部長が直接グローバルCEOに報告する形へと改革することで意思決定の迅速化と顧客ニーズへの即応性を高める狙いだとしている。

また、佐野氏は国内市場での実績を背景に、国内成長の勢いを維持しつつ、日本と海外の事業を有機的につなぐ役割を担うことが期待されている。彼自身が国内事業強化やビジネス変革プログラム(例えば「Culture For Growth」などの組織文化変革支援プログラムのグローバル展開)にも関与してきたことから、人材面や組織風土の刷新にも重点が置かれる可能性がある。

低成長と巨額減損という重荷を抱えながらも、構造改革と権限移譲によって機動力を取り戻せるか。電通グループの再起は、新体制の実行力にかかっている。(出典・写真:MediaPost、AdWeek、AdAge、日本経済新聞、電通グループ他)

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