Panasonic Automotive SystemsはMobiteraに─モビリティ企業への進化を示すブランド転換

パナソニックオートモーティブシステムズは、2027年4月1日付で社名を「モビテラ(Mobitella)」へ変更する。新社名、新ロゴ、企業理念を含むこのブランド刷新は、単なる名称変更ではなく、同社が目指す事業領域と価値提供をより明確に打ち出すための戦略的な意思表示である。

同社は、世界の主要自動車メーカーに技術を供給するティア1サプライヤーとして、安全性、快適性、持続可能性を軸としたモビリティ体験の創出に取り組んできた。今回のブランド転換は、2024年12月に実施されたアポロ・グループとの戦略的パートナーシップに続く、次の成長フェーズを象徴する動きと位置付けられている。

代表取締役社長の永安昌志は、新ブランドについて「人の体験価値を高める高品質な技術によって、モビリティの未来を前進させるというビジョンを体現するもの」と説明する。市場環境が急速に変化する中で組織や事業のあり方を進化させながらも、長年培ってきた中核的価値観は維持するという姿勢が強調されている。

「モビテラ」に込められた意味と次の成長軸

新社名「モビテラ」は、「モビリティ」に、ラテン語で「道」を意味する「イテル(iter)」、日本語で「照らす」を意味する「テラス」を組み合わせた造語である。名称の中央に置かれた「i」には、「個」を起点に体験を設計するという同社の思想が込められている。

このネーミングは、単に移動手段としてのクルマではなく、人の行動や感情、生活全体を支えるモビリティ体験へと視野を広げる意思を象徴している。実際、アポロ・グループとの提携では、車載コックピットシステムを中心としたソフトウェア開発力の強化や、事業ポートフォリオの最適化が掲げられており、ハードウェア中心から統合的な体験価値提供への転換が進められている。

新ブランドのもとで同社は、「持続可能なモビリティ社会を創出し、すべての人々のより良い生活を促進する」という使命を明確化すると同時に、「『Joy in Motion』を生み出すデザイン企業になる」というビジョンを掲げた。ここで言うデザインとは、外観やUIにとどまらず、技術、体験、社会との関係性までを含んだ広義の概念である。

「モビテラ」への社名変更は、パナソニックブランドの延長線に留まらず、自立したモビリティテック企業として再定義するための重要なステップだと言える。ハードとソフト、機能と感情、効率と喜び。その両立をブランドそのものに織り込むことで、同社は次世代モビリティ産業における存在感を改めて確立しようとしている。(出典:Panasonic Automotive Systems、Automotiveworld)

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