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ユニリーバ、AI駆動の社内デザイン拠点「Sketch Pro」を始動ーテレビ中心からソーシャルファーストへ

ユニリーバはIPGスタジオと協働し、ジェネレーティブAIを核とする社内グラフィックデザインセンター「Sketch Pro」を立ち上げた。対象はPersil/Omo、Comfort、Cif、Domestosなどホームケア領域の主要ブランドで、テレビ優先の従来モデルからソーシャルファーストのストーリーテリングへ転換を図る狙いだ。

Sketch ProはAdobe FireflyやGoogle Veo 3を含む複数のAIプラットフォームを組み合わせ、コンセプトを最長2時間で消費者テスト可能なクリエイティブに変換する仕組みを構築した。これによりコンテンツ提供スピードを従来の3倍に高め、文化的トレンドへの即応性を確保する。その背景と目的は以下の通りである。

  • 若年層のメディア習慣の変化:ホームケアブランドは長年テレビCMに依存してきたが、放送・ケーブルに触れない若い世代が増え、マスリーチの効率は低下している。一方で、SNSでは瞬間的なマイクロトレンドが購買行動に直結する状況が生まれており、リアルタイム対応が不可欠となった。
  • 制作リードタイムの短縮:テレビ向け制作は長い準備期間を要する。Sketch ProはAIの活用でこのボトルネックを解消し、わずか数時間でアイデア着想からテスト素材までを生成するワークフローを実現した。
  • マルチプラットフォーム戦略:単一AIに依存せず、目的や表現に応じて最適な生成ツールを組み合わせる「フレキシブルアプローチ」を採用する。Google Veo 3の高精度動画生成機能も取り込み、クリエイティブの幅を拡張している。

現在、Sketch Proはロンドン、サンパウロ、ムンバイ、ジャカルタの4拠点で稼働しており、2026年までに21市場へ拡大する計画である。ジャカルタ拠点ではラマダン期のソーシャルキャンペーンでRinsoやSunlightのTikTok認知度を22.5%向上させ、スピードと文化適合性の両立を実証した。

ユニリーバ・グローバルマーケティングディレクターのマリオ・ドゥギは「IPGとの連携により、消費者の日常生活に即した形でホームケアカテゴリへの関与を強化できる。高速かつ文化的妥当性の高いデザイン資産を創出・反復・提供する能力が向上した」と述べる。

AI活用の広がりとメディア投資の再配分

ユニリーバはジェネレーティブAIをコスト効率と業務効率の両立手段として重視する。最高成長マーケティング責任者エシ・エグルストン・ブレイシーは3月、Doveなどでチャネル横断的に活用できる「デジタルツイン」をAIで生成している事例を明かした。

また同社はメディア投資構成を見直し、マーケティング費用の約50%をソーシャルメディアに充当し、インフルエンサー施策も大幅に増強する方針を示している。

Sketch Proの始動は、レガシーCPG企業がマーケティング基盤を再構築し、AIを活用して“テレビ中心”から“文化即応型ソーシャルファースト”へ移行する象徴的事例である。ユニリーバはAIと人間のクリエイティビティを融合させ、グローバル規模で素早くローカル化されたコンテンツを送り出すことで、次世代消費者との関係を再定義しようとしている。(出典:Unilever, Digital Marketing DIve)

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